『崩壊』(塩田武士)_書評という名の読書感想文

『崩壊』塩田 武士 PHP文芸文庫 2025年10月22日 第1版第1刷

容疑者が抱える真実を、刑事たちが追う。社会の歪みを問うてきた、著者の熱き原点が、令和の時代に蘇る!

一度きりの過ち。取り戻すことは不可能なのだろうか -

関西のある地方都市で、市議会議長が殺された。地元ではダークな一面も持つ人間と噂され、所轄の刑事・本宮宣親は県警捜査一課の若手・平原優子とともに容疑者の手がかりを探る。恨みによる犯行なのか、それとも汚職にまつわる暴力団絡みなのか。捜査を進めていくなかで、本宮も自身が封印してきた過去と向き合うことになる。「真実」 が明らかにされたとき、人は幸せになれるのか - 。「正義」 について問いただす、社会派小説。(PHP文芸文庫)

◇目次
序 章
第一章 発生
第二章 捜査
第三章 浮上
第四章 疑惑
第五章 肉薄
第六章 動機
終 章

※この作品は、2015年8月に光文社文庫より刊行されたものです。なお、今回の文庫化にあたり、一部加筆、修正されています。

塩田作品を初めて読んだのは 『罪の声』 だったでしょうか。直近の 『踊りつかれて』 『存在のすべてを』 は、出た直後に単行本を買って読みました。新刊が出ればすぐにも読みたい - 塩田武士は、私にとってそんな作家の一人です。なので、

380ページある、主な登場人物だけで24人も登場するこの作品について、なるべくなら悪口は書きたくありません。初期作品の一つとしてよく書けているとは思うのですが、最後の最後に、やや不満が残ります。「なるほど、そういうことだったのか」 と、得心することができません。

詳しくは書きませんが、読んだ印象は人それぞれですし、できれば多くの人に読んでほしいので、読書メーターで見つけたta2otkorzさんのこんな感想を載せておきます。ぜひ参考にしてください。

安倍元総理を殺害した山上容疑者が真っ先に思い浮かんだ。復讐の仕方は絶対に間違っているし肯定なんてできないけど親に振り回されてどうにもならない子供が本当につらい。最後の手紙でもう項垂れるしか無かった。ああ、つらすぎる...おじさんと若い女性刑事のコンビ凄い微笑ましかった。少し父親と娘みたいな感じになっていくのかな。この作家さんが描く 「人」 がとても好きです。

それと、もうひとつ。みなさんは、かつてあったバブル期前後のことを憶えておいででしょうか? その時人生の真っ只中にあり、はらかずもバブルの恩恵にあずかった人と、逆に地獄を見た人がいます。そしてそのそれぞれの - たとえば子どもだった人は、この物語を読んでどう思うのでしょう? ある人は、あまりの苦々しさに、ページを捲る手が止まるかもしれません。ある人は、何度もした懺悔を、またするのかもしれません。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆塩田 武士
1979年兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。

作品 「盤上のアルファ」「女神のタクト」「拳に聞け! 」「罪の声」「歪んだ波紋」「朱色の化身」「存在のすべてを」「踊りつかれて」他多数

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