『この地獄を生きるのだ』(小林エリコ)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
『この地獄を生きるのだ』(小林エリコ), 作家別(か行), 小林エリコ, 書評(か行)
『この地獄を生きるのだ』小林 エリコ ちくま文庫 2025年11月10日 第1刷発行
うつ病、生活保護。死ねなかった私が 「再生」 するまで。

自殺未遂、精神疾患、ハラスメント、貧困、希死念慮。問題ばかりの人生を生き抜く、自伝的ノンフィクション!!
普通に働いて、普通に生きたかった。その 「普通」 が、いかに手に入れるのが困難なものかを知った - 月給12万、社会保険なし、休みなし。エロ漫画雑誌の編集者としてブラック企業で働き、心を病んで自殺未遂。仕事を失い、生活保護を受給することに。自由もなく、未来の見えない絶望の中、ふたたび巡り合った 「漫画の編集」 という仕事で運命を拓こうとするが・・・・・・・!? 「引き込まれる」 「他人事じゃない」 「生き様に励まされる」 と反響を呼んだ傑作ノンフィクション。解説 せきしろ (ちくま文庫)
著者の再生までを思うと、そのつらさ生き難さはいかばかりだったろうと。短大を卒業し、何とか就職するまではごく普通の人だったからなおさらに。
そもそも漫画が好きだったので雑誌社に就職したかったのですが、決めた先が最悪でした。精神を病んだのは、それでも彼女が頑張ったからです。頑張って、頑張って、頑張りすぎて、結果彼女はうつ病になります。やむなく会社を退職し、やがて生活保護を受給することとなります。
その後がまたいけません。生活保護を受けながら、独り立ちを目指してクリニックに通い続けた約三年間。その日々こそが地獄でした。やる気のないケースワーカーに消耗し、クリニックの巧妙なビジネスに巻き込まれたりします。
彼ら - 彼女が頼みとする生活保護ケースワーカーやクリニックの副院長ら - は、実は彼女が 「独り立ち」 できるなどとは露ほども思っていません。精神障害者は 「まともには働けない」 と、端から決めて彼女をみているのでした。
彼女は、生活保護を受けている自分に大きな負い目を感じています。できるだけ早くに生活保護を打ち切りたいと思っています。クリニックのやり方に疑心暗鬼になり、できれば通うのを止めたいと考えています。なぜなら、彼女は 「普通に働きたい」 と常に希望し、またその能力が備わっていたからです。ないのはチャンスでした。そこへ至る出口が見つからないのでした。
※生活保護を受給している多くの人は、普通、大手を振って暮らしているとは思えません。できれば知られたくないし、気づかれたくもない、というのが本音だと思います。人には負い目も、プライドも、意地もあります。いかな病気で働けないとなっても、著者のように若い人ならなおさらに、自分を追い込むことになりかねません。生活保護に頼って暮らすこんな日々からは一日でも早く抜け出したいと願う彼女の気持ちはわかるのですが、それが中々周りの人には伝わりません。
この本を読んでみてください係数 80/100

◆小林 エリコ
1977年茨城県生まれ。
短大卒業後、成年漫画雑誌の編集職に就くも自殺を図り退職、のちに精神障害者手帳を取得。その後、NPO法人で事務員として働きながら、ミニコミ制作のほか、本書のもととなる同人誌を発表。現在は東京大学大学院経済学研究科にて特任専門職員として勤務。著書に 『わたしはなにも悪くない』『私がフェミニズムを知らなかった頃』(ともに晶文社)、『生きながら十代に葬られ』(イースト・プレス)、『家族、捨ててもいいですか?』(大和書房)、『私たち、まだ人生を1回も生き切っていないのに』(幻冬舎)、『怒りに火をつけろ』(ことさら出版、近刊)。
関連記事
-
-
『恋』(小池真理子)_書評という名の読書感想文
『恋』小池 真理子 新潮文庫 2017年4月25日11刷 1972年冬。全国を震撼させた浅間山荘事
-
-
『高架線』(滝口悠生)_書評という名の読書感想文
『高架線』滝口 悠生 講談社 2017年9月27日第一刷 そうやって元のところに留まらないで、次々
-
-
『グラニテ』(永井するみ)_書評という名の読書感想文
『グラニテ』永井 するみ 集英社文庫 2018年2月25日第一刷 "女" になるあなたが許せない。
-
-
『ドラママチ』(角田光代)_書評という名の読書感想文
『ドラママチ』角田 光代 文春文庫 2009年6月10日第一刷 〈高円寺〉、〈荻窪〉、〈吉祥
-
-
『漂砂のうたう』(木内昇)_書評という名の読書感想文
『漂砂のうたう』木内 昇 集英社文庫 2015年6月6日 第2刷 第144回 直木賞受賞作
-
-
『じっと手を見る』(窪美澄)_自分の弱さ。人生の苦さ。
『じっと手を見る』窪 美澄 幻冬舎文庫 2020年4月10日初版 物語の舞台は、富
-
-
『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』(白石一文)_書評という名の読書感想文
『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』 白石 一文 講談社 2009年1月26日第一刷 どちらかと
-
-
『今昔百鬼拾遺 河童』(京極夏彦)_書評という名の読書感想文
『今昔百鬼拾遺 河童』京極 夏彦 角川文庫 2019年6月15日再版 昭和29年、
-
-
『神の悪手』(芦沢央)_書評という名の読書感想文
『神の悪手』芦沢 央 新潮文庫 2024年6月1日 発行 このどんでん返しが切なすぎる!!
-
-
『幻年時代』(坂口恭平)_書評という名の読書感想文
『幻年時代』坂口 恭平 幻冬舎文庫 2016年12月10日初版 4才の春。電電公社の巨大団地を出て
















