『ジェンダー・クライム』(天童荒太)_書評という名の読書感想文
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『ジェンダー・クライム』(天童荒太), 作家別(た行), 天童荒太, 書評(さ行)
『ジェンダー・クライム』天童 荒太 文春文庫 2026年2月10日 第1刷
《ジェンダー・クライムとは》 DV、痴漢、盗撮、虐待、同意なき性行為、児童買春、ストーカー行為や暴力、女性を狙った無差別な攻撃、性に関する偏向した考えやゆがんだ性文化に起因する犯罪を、著者はジェンダー・クライムと名付けた

この殺人は誰の復讐なのか?
54歳の男性が殺され遺体の肛門には擦過傷と 「目には目を」 と書かれたメモが。男の息子は3年前に集団レイプ事件を起こしていた。所轄の猛者、鞍岡は一風変わった本庁の若手、志波とバディを組み事件を追うが、やがてレイプ事件被害者の兄が姿を消して・・・・・・・。罪と罰と赦しを問うノンストップ・サスペンス! 解説・大矢博子 (文春文庫)
男を殺した犯人はそう簡単には見つかりません。限りなく疑わしい人物がいるにはいるのですが、(この手の話の定番で)そんな人物ほど、実は事件とは無関係だったりします。なぜ男は殺されたのか - 誰の、どんな恨みを買ったのでしょう。
土手下で中年男性の死体が発見された。暴行の痕があり、肛門に 〈目には目を〉 と書かれた紙がねじ込まれていた。捜査の結果、被害者の身元が判明。彼の息子が大学時代に集団レイプ事件を起こしており、それがある筋からの圧力によって揉み消されていたことがわかった。八王子南署強行犯係の鞍岡警部補と本庁捜査一課の志波警部補 (ちなみにどちらも男性である) は、事件はその復讐ではないかと考え、捜査を進めていく。
復讐だとすれば、なぜレイプ事件を起こした当人ではなくその父親が殺されたのか。あらためて当時の被害者家族に聞き込みに行った彼らは、そこで性犯罪被害者とその家族が長年にわたって苦しんでいる現実を目の当たりにする - 。
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- 本書に描かれた事件はもちろんフィクションだが、読者である私たちはこれが決してフィクションではないことを知っている。被害者の絶望、その家族の苦難、加害者の身勝手な言い分、尻馬に乗って被害者を叩く無関係な人々・・・・・・・加害者は名無しのまま、被害者だけが追い詰められていく。読んでいて目の前が赤く染まるほどの怒りに何度もかられた(性被害の経験者はフラッシュバックのリスクがあるかもしれないのでご注意のほどを)。その怒りは小説に対してではなく、まさしくこの小説の通りのことが起きている現実社会に対してだ。この現代の構図は、とても正しい在り方には思えない。それなのに変わらないのはなぜか。(以下略)
本書の後半に、ある女性が仕事関係者に酔わされてレイプされたことを訴えたエピソードが登場する。すると相手は知り合いの政府関係者を通じて、すでに執行目前だった逮捕状を握り潰させたという、現実に起きた事件を想起させる話だ。逮捕の執行を止めた責任者に向かって登場人物が問う。
「コロシだったら、逮捕状の執行を中止しましたか」
すべてはこの一言に集約される。魂の殺人とも呼ばれ、その傷を家族も含めてずっと抱えていくことになる性犯罪が、なぜこうも軽視されるのか。この社会を性犯罪と二次加害の温床にしてしまった本当の意味での真犯人は誰なのか。
その答えが本書にはある。(解説より抜粋)
※読み終えて思うのは、行き着く先はここだったのか、という感慨です。大矢博子氏の解説の中に、
言葉とは、概念である。
言葉がないということは、そこから生まれる被害に対して無頓着な社会であるということだ。
本書 『ジェンダー・クライム』 の根幹は、そんな社会の描写にある。
とあります。あえて説明はしません。読めばすぐに気づきます。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆天童 荒太
1960年愛媛県松山市生まれ。
明治大学文学部演劇学科卒業。
作品 「孤独の歌声」「家族狩り」「永遠の仔」「悼む人」「歓喜の仔」「包帯クラブ」「ペインレス」他多数
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