『庭の桜、隣の犬』(角田光代)_書評という名の読書感想文
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『庭の桜、隣の犬』(角田光代), 作家別(か行), 書評(な行), 角田光代
『庭の桜、隣の犬』角田 光代 角川文庫 2026年1月25日 初版発行
夫婦って何だろう? 結婚5年、子どもナシ。リアルな大傑作!

田所房子は宗二と結婚して5年。新婚時は弁当屋でバイトをしていたが、夫の転職を機に辞めた。ある日、夫から 「おれ、部屋借りようと思うの」 と切り出される。房子は不満ながらも合い鍵をくれるならと受け入れる。対して宗二は風呂のない四畳半の生活を満喫していた。宗二に好意を寄せる同僚・和田レミが突然泊りに来たり、立ち食いそばをひとり啜ったり。房子は宗二に住所を尋ねず、合い鍵を片手に宗二の部屋を捜し歩く。(角川文庫)
「何度読んでも、こわい小説だ、と思う。」
これは (栗田有起氏の)解説の冒頭の文章です。こわい? この夫婦のどこが、何がこわいの? と、読んだあなたはきっと思うにちがいありません。どちらかといえば温厚で、地味で無害にみえる二人のどんなところが 「こわい」 のか。さして問題はなさそうにみえるのですが、あなたはそれに気付くでしょうか。
田所宗二と房子は三十代半ば、結婚五年目の夫婦だ。宗二はイベント会社に勤めており、房子は専業主婦、二十五年ローンで購入した分譲マンションの一室に住んでいる。子供はいない。夫婦のあいだに取り立てて問題はない。仕事上にトラブルはなく、経済的に困窮することもなく、体は健康、面倒をみなければならない家族はおらず、たがいの実家と険悪な関係にあるわけでもない。
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この夫婦には、奇妙な風通しのよさがある。幸福ではないが、不幸でもないという、ある種の満たされ方をしているせいだろうか。深刻ぶらず、感情に流されもせず、乾いたあきらめがユーモラスでさえある。
しかし読み進めるうちに、こわさはひたひたと確実にこちらに近づいてくる。どこかキテレツな登場人物たちの言動に笑いを誘われ、一見してそうとは感じさせないが、そこに広がるのは宗二が房子と自分の背後に見て取ったように 「それぞれの静けさ」 をたたえた、一切の甘えも温情も許さない世界である。
そしてその世界は、まぎれもなく自分の生きている場所に通じている。あなたはそういう世界に生きているのだと、この小説は的確に告げる。
※夫婦といえど、所詮人はひとりで、どこまでいっても思うところはてんでんばらばらで・・・・・・・というようなことが言いたいのでしょうか? いやいや、そうではなくて。夫婦となって夫婦らしく生きるには二人の絶妙な “間合い“ が必要で、時に大きくたがえてしまうことがありますよというようなことの例なのか - 。いやいやいや。問題は、人としてのもっともっと 「根源的」 なことかもしれません。私にはわかりません。誰か教えてください。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆角田 光代
1967年神奈川県横浜市生まれ。
早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。
作品 「空中庭園」「かなたの子」「対岸の彼女」「紙の月」「八日目の蝉」「笹の舟で海をわたる」「坂の途中の家」「愛がなんだ」「源氏物語」「タラント」「神さまショッピング」他多数
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