『けんちゃん』 (こだま)_書評という名の読書感想文

『けんちゃん』 こだま 扶桑社 2026年1月20日 初版第1刷発行

障害を抱える青年けんちゃん、18歳。けんちゃんと出会って、みんな変わった - 。

特別支援学校高等部に通うダウン症のけんちゃん (18歳)。言葉をスムーズに発することができず、不可解な言動も多い。癇癪を起こしては 「気持ちを落ち着かせる部屋」 に閉じこもる彼に、どの職員も手を焼いている。

そんな彼と出会った人々 - 特別支援学校の寄宿舎で臨時職員として働く多田野唯子、校内イベントを取材する地方新聞記者・水上悠介、学校の生徒たちが立ち寄るコンビニの店員・七尾光、同じ支援学校に通うことになった女子生徒・若山葉月 - それぞれの視点でけんちゃんとの交流を描いた連作小説です (全5編)。

著者こだまは、かつて特別支援学校の臨時職員として三年間働いていた。そこでの経験を下敷きに物語を紡ぎ、けんちゃんという障害のある高校生を魅力的に描く。気づけば読者は、“寄り添う世界“ ともまた違う、“あたらしい世界“ にいる。

『夫のちんぽが入らない』 で衝撃デビューを果たした著者渾身、9年ぶりの初創作小説! (小説 『けんちゃん』 公式サイトより )

もうひとつ。ネット (QJWeb クイック・ジャパン ウェブ) でみたこんな記事を紹介したいと思います。対談形式で、この小説に対する著者の思いが綴られています。冒頭には 「ダウン症の少年を描くけんちゃんは感動の物語ではない・・・・・・・作家・こだま、特別支援学校での3年間で見た障害への違和感」 とあります。(以下はその抜粋です)

かつて支援学校の寄宿舎職員として働いていた、作家のこだまさん。彼女が十数年前に出会ったのが、一人のダウン症の少年 “けんちゃん“ だった。

彼の奇妙に澄んだことばやあふれる創作欲、そして自分の思うままに生きるその姿に、強く心をつかまれたという。彼をモデルにして生まれたのが、こだまさん初の連作小説となる 『けんちゃん』 (扶桑社) だ。

人それぞれが持つ視点を書きたかった

- 小説の中には、こだまさんが支援学校で感じていた体験が散りばめられているように感じます。働き始めてから 「障害」 への見方が変わった部分はありましたか?

こだま 最初は障害のある高校生とどういう会話が成立するのかが何もわからなかったんです。でも、いざ行ってみるとみんな話しかけてくれるし、何より痛感したのが、彼らが本当に普通に楽しんで生きているということ。もちろん苦しそうな時もあるけど、楽しく生きている姿の方がずっと印象的でした。

- 「障害」 とはどんなものだと思われますか?

こだま けんちゃんの姿を見ながら、「彼自身は自分の障害をどの程度わかっているんだろう?」 と思ったことがあって。彼は障害を乗り越えようとするわけでも、意識するわけでもなく、「これが自分だ」 と思って生きている。自分とまわりの人を比較しないから、卑屈じゃないんですよね。彼を見て、「そういう感覚を私も持てたらいいのにな」 ってずっと思っていました。一方で、つらさと向き合いながらもがいている人もいる。「障害がある」 といっても、ひとくくりにできないものですよね。

次に続けて、だから 「関わる人によって、同じ障害であっても見方はまったく違うという状態を書きたかった」 と。

※著者の思いは、果たして読者に届くでしょうか。書いた意図はよくわかります。善いことだけを、ことさら取り上げたわけでもなくて、これが著者の実体験に基づく嘘偽りのない素直な感想だろうと。但し、どれだけのインパクトで受け入れられるかはわかりません。優しすぎるようにも思うのですが、さてどうでしょう?

この本を読んでみてください係数  80/100

◆こだま
作家。私小説 『夫のちんぽが入らない』(扶桑社) でデビュー。同作はNetflix・FODでドラマ化されるなど大きな反響を呼んだ。また、エッセイ集 『ここは、おしまいの地』 (太田出版) は第34回講談社エッセイ大賞を受賞した。その他の著書に 『いまだ、おしまいの地』 『ずっと、おしまいの地』 『縁もゆかりもあったのだ』 (太田出版) がある。本作 『けんちゃん』 が著者初の創作小説となる。

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