『有罪、とAIは告げた』 (中山七里)_書評という名の読書感想文
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『有罪、とAIは告げた』 (中山 七里), 中山七里, 作家別(な行), 書評(や行)
『有罪、とAIは告げた』 中山 七里 小学館文庫 2026年5月20日 第5刷発行
父を殺した18歳少年に下される判決は - 罪は、数値化できるのか? 半歩先のリアルを描く、リーガル・サスペンス!

東京地裁の新人裁判官・高遠寺円は、東京高裁総括判事の寺脇に中国から提供されたAI裁判官 〈法神2〉 の検証を命じられた。裁判記録を入力すると、裁判官の思考を 〈再現〉 し判決文を出力するという。果たして、〈法神〉 が一瞬で作成した文章は裁判官が苦労して書いたものと遜色なく、判決も全く同じだった。日々業務に忙殺される裁判官にとっては福音だが、円はAIに対する疑念がぬぐえずにいる。
その頃、18歳少年が父親を刺殺する事件が発生。裁判長の檜葉は公判前に 〈法神〉 にシミュレートさせるという。出力された判決は - 「死刑」。ついに、その審理が開かれる。(小学館文庫)
CONTENTS
一 ヒトを超えるもの
二 過去を超えるもの
三 情状を超えるもの
四 事実を超えるもの
五 AIを超えるもの
解説 安野貴博
付いたタイトルに、なんと “そそられる“ ことか!! 一も二もなく買いました。おまけに、解説はAIエンジニアで国会議員、チームみらいの党首・安野貴博氏ではないですか。何だかいつにも増して面白そうで、しかし、はたして私に理解できるだろうかと。ちょっと心配もしながら読み出しました。
読み終わった今言えるのは、すべてが杞憂だったということです。中に日頃耳慣れない専門用語が飛び交う場面があるにはありますが、そこは百戦錬磨の著者のこと、わかりやすく丁寧な “解説“ がちゃんと付いてあります。そして、勘違いしてはならないのは、この小説の核となるのは 「AI=人工頭脳」 ですが、物語の主人公はあくまで 「人」 であるという点です。18歳の少年のしたことこそが何より読者の胸を打つ、ということです。
現場のリアリティとしてのAI裁判
本作の舞台は、現実の司法制度のすぐ隣にある。裁判官、書記官、裁判員 - その一人ひとりが、制度の中で葛藤しながらも自らの責務を果たそうとする姿が生々しく描かれている。そこへ登場するのが、AI 〈法神〉。判決文の起案や量刑判断を補助する存在として導入されるこのAIが、物語の中心的な “登場人物“ になる。
〈法神〉 は海外 (中国) で開発されたシステムを日本に適用するものであり、「中国の司法文化をそのまま輸入するのは危うい」 という議論が繰り返される。このくだりには、現実の法制度導入に携わる者として深く共感した。AIはコードとデータで動くが、法はそれだけではなく文化や価値観の上で動く。
AIがいくら正確でも、「社会が納得できるか」 は別の問題だ。AIがどれほど合理的でも、AIがAIであるだけで人間はそれを人間の代替と信じられなくなる。本作はそのギリギリの境界を見事に描き出している。(解説より)
今回、〈法神2〉 を介して判断されるのは、墨田区在住の18歳の少年による父親殺し。少年は父親を刃物でメッタ刺しにした上で逃走、何時間も追跡劇を繰り広げた挙句にようやく逮捕されます。所謂尊属殺人で、過去の判例を鑑みれば、少年は 「死刑」 を宣告されることになります。いかな尊属殺人といえども、果たして18歳の少年に 「死刑」 は如何なものか。更正の機会を与えるべきではないか?・・・・・・・諸々議論はあったのですが、〈法神〉は、それでも 「死刑」 と結論したのでした。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。
作品 「切り裂きジャックの告白」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「闘う君の唄を」「嗤う淑女」「魔女は甦る」「連続殺人鬼カエル男」「護られなかった者たちへ」「能面検事」 シリーズ他多数
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