『家庭用安心坑夫/猿の戴冠式』 (小砂川チト)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
『家庭用安心坑夫/猿の戴冠式』 (小砂川チト), 作家別(か行), 小砂川チト, 書評(か行)
『家庭用安心坑夫/猿の戴冠式』 小砂川 チト 講談社文庫 2026年6月12日 第1刷発行
日常が歪み、思い出される記憶 - 現実と幻想のあわい。破滅へ向かう疾走感。芥川賞候補となった2作を同時収録!!

正気小説と狂気小説の間に設置された鉄板を外して、二つを混ぜた珍しい作品。町田康 (解説より)
廃坑テーマパークのマネキン人形を父親だと言い聞かされて育った専業主婦の小波 (さなみ)。東京で夫と平穏に暮らしていたが、ある日、実家の洋服箪笥に貼ったシールを日本橋三越の柱に見つける。さらに父ツトムが生活圏に出現したことで幼い頃に引き戻され - 。(「家庭用安心坑夫」) 「猿の戴冠式」 を含む二作を収録。(講談社文庫)
二作ともに芥川賞候ということで、相応の覚悟はしていたつもりでした。しかし、小説は予想した何倍も難解で、一度読んだだけでは理解したとはとても言えません。所々で可笑しくもあり、“頷く“ こともあるにはあるのですが、そもそも、こんな話を書いた作者の頭の中がうまく想像できません。どんな生まれで、何があったらこんな話を思い付くのか? 直接会って訊いてみたいものです。
悔しくもあり、情けなくもあるのですが、わからないのにわかったふうには書けません。ただ一点、救いは 「町田康氏の解説が読めた」 ということです。小説の内容とは逆に、氏の解説は 「いやに丁寧に」 書いてあります。「ああなるほど、そういうことか」 と、ここではじめて納得できました。どうにかこうにか読んだ甲斐があるというものです。
【追記】 第175回 (上半期) 芥川賞は選考の結果、小砂川チト氏の 『ゾンビ回収婦』 に決定しました。小砂川さん、おめでとうございます! (買います。読みます。たぶんわからんやろけど。)
この本を読んでみてください係数 85/100

◆小砂川 チト
1990年岩手県生まれ。
慶應義塾大学文学部卒業、同大学院社会学研究科心理学専攻修了。
2022年、「家庭用安心坑夫」 で第65回群像新人文学賞を受賞。同作が第167回芥川賞候補に。さらに’24年、「猿の戴冠式」 で第170回芥川賞候補、単行本化された 『猿の戴冠式』 で第37回三島由紀夫賞候補、第46回野間文芸新人賞候補となる。
関連記事
-
-
『ジオラマ』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文
『ジオラマ』桐野 夏生 新潮エンタテインメント倶楽部 1998年11月20日発行 初めての短
-
-
『熱源』(川越宗一)_書評という名の読書感想文
『熱源』川越 宗一 文藝春秋 2020年1月25日第5刷 樺太 (サハリン) で生
-
-
『森に眠る魚』(角田光代)_書評という名の読書感想文
『森に眠る魚』角田 光代 双葉文庫 2011年11月13日第一刷 東京の文教地区の町で出会った5人
-
-
『携帯の無い青春』(酒井順子)_書評という名の読書感想文
『携帯の無い青春』酒井 順子 幻冬舎文庫 2011年6月10日初版 黒電話の前で、「彼」からの電話
-
-
『真鶴』(川上弘美)_書評という名の読書感想文
『真鶴』川上 弘美 文春文庫 2009年10月10日第一刷 12年前に夫の礼は失踪した、「真鶴」
-
-
『嫌な女』(桂望実)_書評という名の読書感想文
『嫌な女』桂 望実 光文社文庫 2013年8月5日6刷 初対面の相手でも、たちまち
-
-
『昨夜のカレー、明日のパン』(木皿泉)_書評という名の読書感想文
『昨夜のカレー、明日のパン』木皿 泉 河出文庫 2016年2月20日25刷 7年前
-
-
『断片的なものの社会学』(岸政彦)_書評という名の読書感想文
『断片的なものの社会学』岸 政彦 朝日出版社 2015年6月10日初版 「この本は何も教えてくれな
-
-
『空中庭園』(角田光代)_書評という名の読書感想文
『空中庭園』角田 光代 文春文庫 2005年7月10日第一刷 郊外のダンチで暮らす京橋家のモッ
-
-
『神の悪手』(芦沢央)_書評という名の読書感想文
『神の悪手』芦沢 央 新潮文庫 2024年6月1日 発行 このどんでん返しが切なすぎる!!
















