『満願』(米澤穂信)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2015/03/26 『満願』(米澤穂信), 作家別(や行), 書評(ま行), 米澤穂信

『満願』米澤 穂信 新潮社 2014年3月20日発行


満願

米澤穂信の『満願』をようやく読みました。

なんせ評判がすごいものですから気にはなっていたのですが、ミステリーランキングの国内編3冠獲得ですか。これは大したものです。これを読まずに今年のミステリは語れないと言われれば、もう読むしかないのです。
・・・・・・・・・・
この本には、表題作「満願」をはじめ6つの短編が収められています。

「夜警」
ある事件で、新任の川藤巡査は犯人の短刀によって命を奪われます。犯人も川藤の銃弾が命中して死亡します。警察は、川藤の拳銃使用は適正だったという見解を示します。
川藤の生前、交番長の柳岡は川藤が警官には不向きな男だと感じており、川藤の言動を注視していました。

「死人宿」
佐和子が仕事で悩んでいた時、彼女を十分理解しようとしなかったことを私は後悔しています。佐和子は大学職員を辞めた後、栃木の八溝の山深い温泉宿の仲居になっていました。
その温泉宿は「死人宿」と噂され、毎年自殺者が出ることで有名な宿でした。
「柘榴」
さおりの夫・佐原成海は異性を惹き付ける不思議な魅力の持ちですが、如何せん生活能力がありません。夕子と月子、二人の娘がいるものの、さおりは佐原との離婚を決意します。
放棄すると思っていた親権について、佐原は予想に反して二人の娘を引取ると言います。

「万灯」
井桁商事の伊丹は、バングラデシュで天然ガス資源の開発に従事しています。しかし、インフラは未整備、政情も定まらない中で仕事は思うように捗りません。事業を円滑に進めるには、開発予定地への途中にどうしても物資の集積拠点を設置する必要がありました。

「関守」
伊豆半島の天城連山を越える道「桂谷峠」は、小田原から車で三時間、曲がりくねった山道をひたすら辿った先にありました。ライターの俺は、都市伝説の原稿を依頼されて桂谷峠まで来ています。俺はさびれたドライブインで、店主の老婆に何気に取材を始めます。

「満願」
藤井が初めて鵜川妙子と出会ったのは、先輩から紹介された下宿先の玄関でした。鵜川家は夫婦二人、藤井は二階で、弁護士を目指して司法試験の勉強に明け暮れます。
鵜川妙子が貸金業を営む矢場英司を殺害したのは、昭和52年9月のことでした。
調布警察署の面会室で4年ぶりに妙子と再会した藤井は、妙子の弁護人となります。

どこかに書いてましたが、まさしく王道ですね。久々にミステリーに浸りました。
題材が豊富で、同じような話が一切なくて、トリックというかオチがどれも鮮やかです。
こんな短編なら、いくらでも読んでいたい、そう思いました。

好みはあるでしょうが、私のオススメは「万灯」と「関守」ですかね。
どちらか選べと言われたら、、、「関守」、いやそれより「柘榴」の艶っぽさが捨てがたいな。。。
「夜警」の柳岡の硬質な感じはいいよなぁ、と思いは千々に乱れるのです。

 

この本を読んでみてください係数 90/100


満願

◆米澤 穂信

1978年岐阜県生まれ。

金沢大学文学部卒業。

作品「氷菓」「心あたりのある者は」「インシテミル」「追想五断章」「折れた竜骨」他多数

◇ブログランキング

応援クリックしていただけると励みになります。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

関連記事

『JR上野駅公園口』(柳美里)_書評という名の読書感想文

『JR上野駅公園口』柳 美里 河出文庫 2017年2月20日初版 JR上野駅公園口 (河出文

記事を読む

『メガネと放蕩娘』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『メガネと放蕩娘』山内 マリコ 文春文庫 2020年6月10日第1刷 メガネと放蕩娘 (文春

記事を読む

『王とサーカス』(米澤穂信)_書評という名の読書感想文

『王とサーカス』米澤 穂信 創元推理文庫 2018年8月31日初版 王とサーカス (創元推理文

記事を読む

『はるか/HAL – CA』(宿野かほる)_書評という名の読書感想文

『はるか/HAL - CA』宿野 かほる 新潮文庫 2021年10月1日発行 はるか (新潮

記事を読む

『メタモルフォシス』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文

『メタモルフォシス』羽田 圭介 新潮文庫 2015年11月1日発行 メタモルフォシス (新潮文

記事を読む

『色彩の息子』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『色彩の息子』山田 詠美 集英社文庫 2014年11月25日初版 色彩の息子 (集英社文庫)

記事を読む

『魔女は甦る』(中山七里)_そして、誰も救われない。

『魔女は甦る』中山 七里 幻冬舎文庫 2018年7月25日5版 魔女は甦る (幻冬舎文庫)

記事を読む

『ふたりの距離の概算』(米澤穂信)_書評という名の読書感想文

『ふたりの距離の概算』米澤 穂信 角川文庫 2012年6月25日初版 ふたりの距離の概算 (角

記事を読む

『凶犬の眼』(柚月裕子)_柚月裕子版 仁義なき戦い

『凶犬の眼』柚月 裕子 角川文庫 2020年3月25日初版 凶犬の眼 (角川文庫) 広

記事を読む

『飼う人』(柳美里)_書評という名の読書感想文

『飼う人』柳 美里 文春文庫 2021年1月10日第1刷 飼う人 (文春文庫) 結婚十

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『ビオレタ』(寺地はるな)_書評という名の読書感想文

『ビオレタ』寺地 はるな ポプラ文庫 2017年4月5日第1刷

『犯人は僕だけが知っている』(松村涼哉)_書評という名の読書感想文

『犯人は僕だけが知っている』松村 涼哉 メディアワークス文庫 2

『大人は泣かないと思っていた』(寺地はるな)_書評という名の読書感想文

『大人は泣かないと思っていた』寺地 はるな 集英社文庫 2021年4

『雪が降る』(藤原伊織)_書評という名の読書感想文

『雪が降る』藤原 伊織 角川文庫 2021年12月25日初版

『リリアン』(岸政彦)_書評という名の読書感想文

『リリアン』岸 政彦 新潮社 2021年2月25日発行 リリア

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑