『花の鎖』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/10
『花の鎖』(湊かなえ), 作家別(ま行), 書評(は行), 湊かなえ
『花の鎖』湊 かなえ 文春文庫 2018年8月1日19刷
両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガンで入院した梨花。職場結婚したが子供ができず悩む美雪。水彩画の講師をしつつ和菓子屋でバイトする紗月。花の記憶が3人の女性を繋いだ時、見えてくる衝撃の事実。そして彼女たちの人生に影を落とす謎の男 「K」 の正体とは。驚きのラストが胸を打つ、感動の傑作ミステリ。(文春文庫)
この作品は、雪・月・花の字を名前に持つ3人の女性、「美雪」「紗月」「梨花」 を主人公に、それぞれの人生を “花の記憶” で紡いだミステリーの秀作、著者の代名詞ともいえる 「嫌ミス」とは一線を画し、”母と娘” を描いて感動の物語だともいえます。
舞台は、東京から新幹線で1時間以上かかる地方都市から、さらに在来線で30分ほど行った先にある田舎町。町の中心には 「アカシア商店街」 があり、創業80年の老舗 『梅香堂』 のきんつばが有名で、郊外には風光明媚な「御笠渓谷」 があります。
「花」 の主人公は、3年前に両親を事故で亡くし、祖母と二人暮らしの 梨花(27歳)。勤めていた英会話スクールが経営破綻し、途方に暮れていた矢先、祖母が胃癌で入院します。生活費、入院費、手術費用に困窮した梨花は、「K」 に援助を申し出ることを決意します。「K」 とは、梨花が物心ついた頃から毎年10月20日に大きな花束を母親宛てに贈ってくれていた人物。梨花の両親が亡くなった時にも経済的援助を申し出ている謎の人物です。
「雪」の主人公は、6歳年上の夫と二人暮らしの 美雪(23歳)。高校卒業後、母方の伯父が役員をしている建設会社に就職し、同じ職場にいた和弥と出会い、3年前に結婚退職。夫婦仲は良いのですが、子宝に恵まれないことが悩み。伯父の息子であり、美雪の従兄弟にあたる陽介と一緒に新しい建築事務所を立ち上げた和弥が、希望通りの仕事を任されていないことも気に掛かっています。
「月」の主人公は、母親と二人暮らしの 紗月(25歳)。学生時代に描いた花のイラストが出版社の目に留まり、イラストレーターとして画集を出版したこともある才能の持ち主。公民館で水彩画の講師をしているかたわら、和菓子屋 「梅香堂」 でアルバイトをしています。ある日、短大卒業後から絶縁状態にあった友人希美子と5年ぶりに会うと、希美子の夫である浩一を助けてほしいと頼まれます。紗月しか助けられる人がいないのだ、と。紗月はそれを厳しい言葉で一蹴します。(解説からの抜粋)
さて、謎の人物 「K」 とは一体誰なのか? 毎年決まった月の決まった日に届く豪華な花束の意味とは? 梨花の死んだ両親は、「K」 が誰かを知った上で、毎年届く花束を粛々と受け取っていました。祖母は、「K」 が誰かを知っていたかどうかはわかりません。
和弥は、仕事とは別に(つまりは陽介には内緒で) 県が開催する美術館のコンペティションに参加することを決意します。その美術館には、日本のピカソと呼ばれる香西路夫の作品が展示される予定になっています。
香西路夫が遺した絵の中で美雪がとりわけ好きな作品が 『未明の月』 で、御笠峡谷、通称 「雨降り峡谷」 にある獅子岩から御笠山を見上げた景色を描いたものでした。この辺りを描いたと思われる絵は他にも数点あり、香西路夫の庵があったといわれる渓谷の入口には、最初彼が播いたというコスモスが咲き乱れ、とてもきれいな景色が広がっています。
ある出来事のあと、普通何千、何万分の一の確率でしかない中で、紗月と浩一の白血球の型が同じであることが判明します。その頃二人は恋人同士。稀に見る偶然に運命的なものを感じるのですが、実は二人は血が繋がっており、 “はとこ” だったとわかります。
※おそらくは、何回かは読み直さなければならないと思います。そうしないと、なかなかに3人の関係がみえてきません。何より、どこに (誰に) 時間軸を置いて読むのか。それが肝要です。
この本を読んでみてください係数 85/100
◆湊 かなえ
1973年広島県因島市中庄町(現・尾道市因島中庄町)生まれ。
武庫川女子大学家政学部卒業。
作品 「告白」「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「望郷」「豆の上で眠る」「リバース」「物語のおわり」「ユートピア」「ポイズンドーター・ホーリーマザー」他多数
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