『むかしむかしあるところに、死体がありました。』(青柳碧人)_書評という名の読書感想文

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳 碧人 双葉社 2019年6月3日第5刷

むかしむかしあるところに、死体がありました。

昔ばなし×ミステリ 読めば必ず誰かに話したくなる、驚き連続の作品集!

昔ばなし、な・の・に、新しい。
鬼退治。桃太郎って・・・・・・え、そうなの?
大きくなあれ。一寸法師が・・・・・・・ヤバすぎる!
ここ掘れワンワン。埋まっているのは・・・・・・・ええ!?
「浦島太郎」 や 「鶴の恩返し」 といった皆さんよくご存じの 《日本昔ばなし》 を、密室やアリバイ、ダイイングメッセージといったミステリのテーマで読み解く全く新しいミステリ! 「一寸法師の不在証明」「花咲か死者伝言」「つるの倒叙がえし」「密室龍宮城」「絶海の鬼ヶ島」 の全5編収録。(アマゾン内容紹介より)

打ち出の小槌を振ると、一寸法師の身体はみるみる大きくなり、見目麗しき若者へと変身を遂げます。花咲か爺さんという人はそれはそれは良い人で、そんな人は滅多にいないのでした。鶴の恩返しに登場する鶴の名前は、そう言えば “つう” といいました。何十年ぶりかにそんなことを思い出しました。

浦島太郎は乙姫からあれほど強く言われたにもかかわらず、我慢ができずに玉手箱を開けてしまいます。というか、何が為に乙姫は太郎にあんなものをお土産として渡したのでしょう? それがわかりません。

鬼ヶ島には、十三頭の鬼が住んでいます。
鬼厳 (黒鬼) と鬼おばば (黄鬼) の老姉弟。
鬼朗 (赤鬼) と鬼太 (赤鬼) の兄弟。
鬼松 (青鬼) と鬼茂 (青鬼) の父子。
鬼三 (黄鬼)、鬼菊 (桃色鬼) の夫婦とその娘、鬼百合 (桃色鬼)。
鬼兵 (緑鬼)、鬼藤 (赤鬼) の夫婦とその娘、鬼梅 (緑鬼)。
そして、孤高気取りの気障なみなしご、鬼広 (青鬼)。

もう鬼、鬼、鬼の、鬼だらけ。鬼の兄弟やら夫婦やらがやたら登場してきます。そんな中、鬼と鬼との壮絶な殺戮合戦が繰り広げられます。桃太郎は一体どこへ行ったのでしょう?

※鬼ヶ島の鬼ほどではないにせよ、それぞれがそれぞれに “裏” があり、いろんな仕掛けが施してあります。一筋縄ではいきません。思う以上に、ややこしい。そして、必ず誰かが殺されます。ヒーローが、ときに殺人者となります。

[概要]
・一寸法師の不在証明 お姫様を鬼から守った一寸法師。打ち出の小槌で大きくなった彼は、それはそれは立派な若者となり、お姫様と結婚することになります。ところが、そこまではよかったのですが・・・・・・・。

・花咲か死者伝言 灰をまいて、花を咲かせていたお爺さん。お殿様からもらったご褒美を、村に寄付するような優しい人でした。ところがある日、お爺さんは何者かの手で殺されていたのでした・・・・・・・。

・つるの倒叙がえし 村の青年が、宿に困っていたつうを泊めました。そのお礼にと、つうは反物を織りますが、それが高く売れると知った青年は、「もっと織れ」 とつうに迫ります。(いやがうえにも二度読みすることになります。「倒叙」 とは? まずそれを調べてください! )

・密室龍宮城 亀を助けた浦島太郎は、連れて行かれた龍宮城で飲めや歌えの大宴会。そんな中、伊勢海老のおいせが殺されました・・・・・・・。

・絶海の鬼ヶ島 鬼ヶ島で行われた桃太郎とその仲間たちVS鬼たちの戦いは、桃太郎側の勝利に終わりました。でも本当の戦いは、そこから始まったのでした・・・・・・・。

この本を読んでみてください係数 85/100

むかしむかしあるところに、死体がありました。

◆青柳 碧人
1980年千葉県生まれ。
早稲田大学教育学部卒業。

作品 「浜村渚の計算ノート」「ブタカン! 」「西川麻子」など人気シリーズ多数 

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