『テミスの剣』(中山七里)_テミスの剣。ネメシスの使者
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最終更新日:2024/01/08
『テミスの剣』(中山七里), 中山七里, 作家別(な行), 書評(た行)
『テミスの剣』中山 七里 文春文庫 2017年3月10日第1刷

昭和五十九年、台風の夜。埼玉県浦和市で不動産会社経営の夫婦が殺された。浦和署の若手刑事・渡瀬は、ベテラン刑事の鳴海とコンビを組み、楠木青年への苛烈な聴取の結果、犯行の自白を得るが、楠木は、裁判で供述を一転。しかし、死刑が確定し、楠木は獄中で自殺してしまう。
事件から五年後の平成元年の冬。管内で発生した窃盗事件をきっかけに、渡瀬は、昭和五十九年の強盗殺人の真犯人が他にいる可能性に気づく。渡瀬は、警察内部の激しい妨害と戦いながら、過去の事件を洗い直していくが・・・・・・・。中山ファンにはおなじみの渡瀬警部が 「刑事の鬼」 になるまでの前日譚。『どんでん返しの帝王』 の異名をとる中山七里が、満を持して 「司法制度」 と 「冤罪」 という、大きなテーマに挑む。(「BOOK」データベースより」
おそらく佳境は - 楠木明大に代わり、元錠前技師の迫水二郎が真犯人であると判明した - その後から、である。
右手に剣を、左手には秤を携えた法の女神テミス。
剣は力を意味し、秤は正邪を測る正義を意味している。力なき正義は無力であり、正義なき力は暴力である、といったところか。だがテミス像には剣を掲げたものと秤を掲げたものの二種類が存在する。最高裁のテミス像が右手の剣を高々と掲げているのは、正義よりも力を誇示していることへの痛烈な皮肉なのか。法の執行者の一人である静は剣の非情さを思い知っていた。テミスが振り下ろす剣には一片の同情も仮借もない。冷厳な刃で唯々咎人を切り刻み、その骸を民衆の前に並べるだけだ。
裁判官室に入って法衣に袖を通すと、静は一つ深呼吸をした。これから自分はテミスの代行者となる。力を代行する限り、剣に刻まれる者の憤怒と怨嗟をも一身に引き受けなければならない。人を裁くことは同時に自らを裁くことだ。(P89.90)
渡瀬の慟哭。その後の執念と決意。彼はこの先、二度と間違えない。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。
作品 「切り裂きジャックの告白」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「闘う君の唄を」「嗤う淑女」「魔女は甦る」「悪徳の輪舞曲(ロンド)」「連続殺人鬼カエル男」他多
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