『合理的にあり得ない』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文
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『合理的にあり得ない』(柚月裕子), 作家別(や行), 書評(か行), 柚月裕子
『合理的にあり得ない』柚月 裕子 講談社文庫 2020年5月15日第1刷
上水流涼子 (かみづる・りょうこ) は弁護士資格を剥奪された後、頭脳明晰な貴山を助手に探偵エージェンシーを運営。金遣いが荒くなった妻に疑念を抱く夫、賭け将棋で必勝を期すヤクザ、野球賭博絡みのトラブルetc.。欲に塗れた人物たちの難題を涼子は知略と美貌を武器に解決するが。著者の魅力全開、極上痛快エンターテインメント! (講談社文庫)
[目次]
1.確率的にあり得ない
2.合理的にあり得ない
3.戦術的にあり得ない
4.心情的にあり得ない
5.心理的にあり得ない
涼子が代表を務める上水流エージェンシーは、定款上は興信所の扱いになっている。顧客の大半は富裕層だ。表には出せない相談事を解決し、一流弁護士並みの依頼料を受け取っている。実際、涼子の年収は、貴山への安くない給料を払っても、弁護士時代を凌いでいる。その代り、依頼を完遂するためには法律に触れることも厭わないのが、涼子の遣り方だった。(本文より)
唯一の部下・貴山伸彦はIQ140を超える東大卒の若者で、彼ならどんな世界でも身を立てていけると思うのですが、新宿区にある雑居ビルの一室で、危うい依頼ばかりを受ける三十路の独身女に仕えているのは、何か特別な訳でもあるのでしょうか?
それより何より、美貌の元弁護士・上水流涼子はなぜ弁護士資格を剥奪されのか? 彼女の過去に何があったのか? 涼子と貴山の関係は? 物語の中盤以降、それらが徐々に明らかになっていきます。
※目次を見ただけで読んでみたいと思う人が、おそらく何人もいるはずです。期待は裏切りません。面白くないわけがありません。まだまだ続く自粛モードにおススメの一冊。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆柚月 裕子
1968年岩手県生まれ。
作品 「臨床真理」「盤上の向日葵」「最後の証人」「検事の本懐」「検事の死命」「検事の信義」「ウツボカズラの甘い息」「朽ちないサクラ」「孤狼の血」他多数
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