『少年と犬』(馳星周)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2020/08/24
『少年と犬』(馳星周), 作家別(は行), 書評(さ行), 馳星周
『少年と犬』馳 星周 文藝春秋 2020年7月25日第4刷
傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だった - 。
2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の 「守り神」 になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか・・・・・・・
犬を愛するすべての人に捧げる感涙作! (文藝春秋)
第163回 直木賞受賞作、馳星周の 『少年と犬』 を読みました。
この作品は、人と犬とを繋ぐ6話からなる連作短編集です。東日本大震災後、多聞という名のその犬は、行く先々で助けられ、幾人もの人の心に寄り添いながら、5年もの月日を経て、遠く離れた愛しい人のもとへとたどり着いたのでした。
第一話 男と犬 (宮城県仙台市名取川付近) 家族のために犯罪に手を染めた男。拾った犬は男の 「守り神」 になりました。
第二話 泥棒と犬 (仙台 ~ 新潟) 仲間割れを起こした窃盗団の男は、守り神の犬を連れて故国を目指します。
第三話 夫婦と犬 (新潟 ~ 富山) 壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼びました。
第四話 娼婦と犬 (富山 ~ 滋賀県大津市) 体を売って男に貢ぐ女。どん底の人生で女に温もりを与えたのは犬でした。
第五話 老人と犬 (大津 ~ 島根) 老猟師の死期を知っていたかのように、その犬はやってきたのでした。
最終話 少年と犬 犬は海を渡ります。震災のショックで心を閉ざした少年は、その犬を見た瞬間、微笑んだのでした。
小学生の頃のことです。私は学校の図書室で本を借りて読むのが好きでした。中でも繰り返し借りて読んだのが 『名犬ラッシー』 でした。映画やテレビドラマにもなりましたが、私はオリジナル・ストーリー 『名犬ラッシー 家路』 を元に制作された (子ども向けの半ば絵本の) 作品が大好きでした。7回も、8回も、借りて読んだと思います。
遠い遠いあの頃の、そんな日を思い出しました。
この本を読んでみてください係数 85/100
◆馳 星周
1965年北海道生まれ。
横浜市立大学卒業。
作品 「不夜城」「鎮魂歌 不夜城Ⅱ」「漂流街」「生誕祭」「復活祭」「アンタッチャブル」「比ぶ者なき」「神の涙」「暗手」「蒼き山嶺」「雨降る森の犬」他多数
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