『家族じまい』(桜木紫乃)_書評という名の読書感想文

『家族じまい』桜木 紫乃 集英社 2020年11月11日第6刷

家族じまい (集英社文芸単行本)

家族はいったいいつまで家族なのだろう

子育てに一区切りついた智代のもとに、突然かかってきた妹・乃理からの電話。
「ママがね、ボケちゃったみたいなんだよ」

新しい商売に手を出しては借金を重ね、家族を振り回してきた横暴な父・猛夫と、そんな夫に苦労しながらも共に歳を重ね、今は記憶を失くしつつある母・サトミ。親の老いに直面して戸惑う姉妹と、さまざまに交差する人々。夫婦、親子、姉妹・・・・・・・家族はいったい、いつまで家族なのだろう。北海道を舞台に、家族に正面から向き合った五編からなる連作短編集。(集英社 青春と読書より)

ふたりを単位にして始まった家族は、子供を産んで巣立ちを迎え、またふたりに戻る。そして、最後はひとりになって記憶も散り、家族としての役割を終える。人の世は伸びては縮む蛇腹のようだ。(本文より)

[目次]
第一章 智 代
第二章 陽 紅
第三章 乃 理
第四章 紀 和
第五章 登 美 子

第15回中央公論文芸賞受賞作、桜木紫乃の 『家族じまい』 を読みました。

この小説は、ある老夫婦を中心に、二人に関わる五人の女性たちの 「家族」 を巡る物語です。五人は (老夫婦の) 娘であったり、姉であったり、赤の他人であったりします。現に家族であったり、今は家族でなくなったり、新しく家族になろうとしたりしています。

妻のサトミは物忘れが極端にひどくなり、ついさっき食事をしたことさえ忘れてしまうようになっています。目を離すと際限なく食べようとする妻に、夫の猛夫はほとほと手を焼いています。

症状は悪化の一方で、世話はすれども報われず、猛夫は為す術がありません。彼は時に我慢できずに妻を殴るのですが、しばらく経つと、妻のサトミは殴られたことすら忘れています。

姉の智代は、母のサトミのことを 「サトミさん」 と呼んでいます。他人行儀になったのは、他人行儀になるしかないだけの過去があったからです。実のところ、父の猛夫はそのことを激しく後悔しています。智代とは、悔やむ分だけ疎遠になっています。

二十五歳でバツイチの陽紅 (ようこ) が、今年五十五歳になる片野涼介との縁談を受けたのは、何も断り切れなかったその場の状況だけが理由ではありません。彼女には彼女なりの打算がありました。

紀和は、曲がりなりにもプロのサックス奏者として身を立てています。彼女が猛夫とサトミ夫婦に会ったのは、名古屋から苫小牧へ向かうフェリーのシアターラウンジでのことでした。紀和がする映画音楽の演奏に、二人は大層感激したのでした。猛夫は紀和に、ある頼み事を託します。

登美子にとって唯一の気がかりは、下の娘の珠子のことでした。珠子が背中に刺青を背負った男と暮らし始めてから三十年近く、二人は一度も連絡を取り合ってはいません。思えば珠子は、五十八歳になっています。娘を思い、同時に、登美子は八十歳になった妹・サトミのことを思い出します。

※「家族をしまう」 の 「しまう」 は、「終う」 ではなく 「仕舞う」 であるらしい。ただ 「終う」 のではなく、「仕舞う」 準備と覚悟が要るらしい。

この本を読んでみてください係数 85/100 

家族じまい (集英社文芸単行本)

◆桜木 紫乃
1965年北海道釧路市生まれ。
高校卒業後裁判所のタイピストとして勤務。

作品 「起終点駅/ターミナル」「凍原」「氷平線」「ラブレス」「ホテルローヤル」「硝子の葦」「誰もいない夜に咲く」「星々たち」「ブルース」「霧/ウラル」「砂上」他多数

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