『白磁の薔薇』(あさのあつこ)_書評という名の読書感想文

『白磁の薔薇』あさの あつこ 角川文庫 2021年2月25日初版

白磁の薔薇 (角川文庫)

富裕層の入居者に最高のケアで人生の最期を提供する豪奢なホスピス 『ユートピア』。千香子はオーナーの中条に見込まれ、住み込みで看護師長を務めていた。ある夜、嵐で道が寸断され施設は孤立してしまう。千香子らスタッフは全員、中条に部屋へ集められるが、そこで彼が話し始めたのはとんでもない提案だった。そして翌朝、看護師の1人が他殺体で発見される・・・・・・・。謎の少年 「白兎」 にまつわるシリーズ最終巻。著者渾身の決定版。(角川文庫)

生と死と欲望が渦巻く、あさのあつこのサスペンス・ミステリ - 4ヶ月連続刊行の第4弾 (最終巻)『白磁の薔薇』 を読みました。

このシリーズは、「白兎」 と名乗る謎の少年が登場する、時空を超えた四つの をめぐる物語です。彼は、決まって死にたいと願う人のところへ現れます。さまよう心に寄り添って、人を死へと導きます。

(四冊共に) 講談社から刊行された単行本が、加筆修正され改題されて新たに角川文庫より発行されました。

第一作 『緋色の稜線』 -  旧題 『白兎 1 透明な旅路と』
第二作 『藤色の記憶』 -  旧題 『白兎 2 地に埋もれて』
第三作 『藍色の夜明け』 - 旧題 『白兎 3 蜃楼の主』
そして最終巻、第四作 『白磁の薔薇』 -  旧題 『白兎 4 天国という名の組曲』 となります。

但し、

いちおうシリーズ名として、「白兎」 シリーズとよんでいるが、これはやや微妙である。というのも、四作に白兎という少年が出てくるものの、決して主人公ではないからだ。むしろ各篇の主人公たちを導く役割を担っているだけで、決して白兎の物語が進行するわけではない。

第四作の本書では、白兎の出自に関わる話が出てくるものの、第三作 『藍の夜明け』 の冒頭におかれた時代小説的な物語の中にも白兎が出てきて、必ずしも同一人物ではない。さまよう人々の魂をあの世へと導く役割をもつ少年を 「白兎」 と命名しているだけと解釈していいだろう。

それにしても、何とも不思議な魅力にみちた連作であることか。第一作 『緋色の稜線』 に僕は、「魂の中に生き続ける懐かしい故郷への探索。生の中で息づく温かな悲歌だ」 という推薦文を寄せたけれど、意識と無意識、現実と夢、現在と過去の間に、妖しくも温かでノスタルジックな哀しい歌が流れていて、心地よいのである。しかも味わいは各作品によって違っていて、あえて本文庫が白兎シリーズという名称を使わない理由もわかる。(池上冬樹/解説より)

四作に共通して言えるのは、主たる登場人物について、かれらはみな同様に、つらい過去を引き摺りながら生きている、ということです。家族関係は完全に壊れており、その壊れた瓦礫の中から新たな生の価値を見出そうとしています。そして、それを助けるのが 「白兎」 という少年です。

※この四冊のおかげで、しばらくの間愉しみな時間が過ごせました。私は白兎の、どこが気に入ったのでしょう。何が良くて熱心に読んだのか。嫌な想像ですが、突き詰めた、人の不幸を見たかったのかもしれません。

この本を読んでみてください係数 80/100

白磁の薔薇 (角川文庫)

◆あさの あつこ
1954年岡山県英田郡美作町(現:美作市)湯郷生まれ。
青山学院大学文学部卒業。

作品 「ほたる館物語」「バッテリー」「バッテリーⅡ」「たまゆら」「緋色の稜線」「藤色の記憶」「藍の夜明け」他多数

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