『廃墟の白墨』(遠田潤子)_書評という名の読書感想文

『廃墟の白墨』遠田 潤子 光文社文庫 2022年3月20日初版

今夜王国に男たちが集められる  ここは牢獄か、それとも楽園か?

和久井ミモザは、死の床にある父親に届いた薔薇の絵の写真と不可解な手紙に導かれ、大阪に赴く。指定された廃墟のようなビルにいたのは正体不明の三人の男。ここを 「王国」 と呼ぶ男たちは、父の過去を話し始める。かつて 「王国」 で起きた忌まわしい事件が語られるうち、ミモザ自身の真実もまた明らかになり - 。愛と罪、贖罪が重なり合う、哀切と衝撃の傑作長編。(光文社文庫)

序章で綴られるのは、母親と子どものいる風景。母親は子どもをミモザと呼んでいる。彼女の宝物は、ロルカ詩集とチョーク入れとカスタネット。あともうひとつ大切にしているのは、彼女の母親が初恋の人からもらったという古い船員手帳。遠くへ行きたい と繰り返し語り、ロルカの詩を口ずさみ、カスタネットを鳴らす母。胸が痛くなるほど美しいイメージだが、いったいどんな物語なのかはまだわからない。

本書では、白墨自身が関係しているらしい事件や、ミモザの持つ母親の記憶についての疑問など、複数の謎が複雑に絡み合っている。少しずつ解決に向かっているかにみえても、そこからまた二転三転し、最後まで物語がどこへ向かうのかわからない。彼らが共有していた密度の濃い時間が、実は真夜中から朝までのたった一晩のできごとだったことには驚くばかりだ。

大人たちも哀しい。けれどもそれ以上につらい思いをさせられるのが子どもたちだ。彼らは大人たちに虐げられている。相手の顔色をうかがい、親たちの諍いに胸を痛め、人々の心ない言葉に傷つけられる。”真実を明かさず子どもに不自由を強いる大人” と、”大人が教えないせいで何も知らない子ども” は対のような存在といっていい。白墨しかり、ミモザしかり。(解説より抜粋)

※はじめ、これは一体どこの国の話だろうと。ミモザ、白墨、明石などという (主たる登場人物たちの) 名前からしてうまく馴染めないかもしれません。そして思うはずです。何が伝えたいのだろうと。著者には著者の目論見があるのでしょうが、それより前に、何よりこの手の話はリアルかどうかが問題です。

この本を読んでみてください係数  80/100

◆遠田 潤子
1966年大阪府生まれ。
関西大学文学部独逸文学科卒業。

作品 「月桃夜」「カラヴィンカ」「アンチェルの蝶」「お葬式」「あの日のあなた」「雪の鉄樹」「蓮の数式」「オブリヴィオン」「冬雷」他

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