『岡山女/新装版』(岩井志麻子)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/06
『岡山女/新装版』(岩井志麻子), 作家別(あ行), 岩井志麻子, 書評(あ行)
『岡山女/新装版』岩井 志麻子 角川ホラー文庫 2022年6月25日改版初版
ここはきょうてい生き地獄じゃ。
碧眼の女霊媒師が遭遇する、死霊の怨嗟と人間の悪意。妾として囲われていたタミエは、ある日旦那に日本刀で切り付けられ左目と美しい容貌を失った。代償に彼女が手にしたのは、この世ならざる魑魅魍魎と死霊の影を捉える霊能力だった。「霊感女性現る」 と町でも評判となるタミエ。やがて彼女の許へは、おぞましい事情を抱えた依頼客達が次々と集まってくるようになり - 。明治の岡山を舞台に、碧眼の女霊媒師の怪異との邂逅を精妙な筆致で描き上げた至高の幻妖怪奇小説。解説・池澤春菜 (角川ホラー文庫)
第124回直木賞候補作
【目次】
・岡山バチルス
・岡山清涼珈琲液
・岡山美人絵端書
・岡山ステン所
・岡山ハイカラ勧商場
・岡山ハレー彗星奇譚
岡山を舞台にした連作短編集。本書はその新装文庫版です。
物語の紡ぎ手となるタミエは、妾として囲われることで両親を養っていた。だがある日、旦那の宮一に日本刀で切りつけられ、無理心中を図られる。宮一は死に、タミエは左目と商売道具だった容貌を損ねられ、辛うじて生き延びた。だが、それ以来、タミエの見えないはずの左目には、この世とあの世の境を透かし、人ならざるものや、死者が映るように。霊媒として生きることになったタミエの元に、さまざまな思いを抱えた依頼人がやってくる・・・・・。
身なりは良いのにどこか不良娘の匂いをさせる由子は、幼い頃から双子のように仲良く育った利子の話をする。2人は繰り返し同じ夢を見るという。不思議な洋館、気配だけ見せて決して姿を現さない姉妹、地下室の棺。しかし、由子の話と現実は少しずつ食い違っている。悪意という名のバチルスに冒された少女たちの物語 「岡山バチルス」。
「岡山清涼珈琲液」、タミエの元に入り婿先の義母を探して欲しいという相談が持ち込まれる。相談者の相田は、人品卑しからぬ風体。だがタミエの目には、花の中で艶然と微笑む美しい年増女が見えていた。
巷で話題の美人絵端書。それを売る店でタミエは不思議な雰囲気の若い男と出会う。後日、タミエの元にやってきたその男は、母を探してくれ、と頼む。彩色された写真の中に閉じ込められた女たちの秘密を描く 「岡山美人絵端書」。(解説より抜粋)
と続きます。どれもが甲乙付け難く、読み応え十分な一冊です。中でお勧め二作を敢えて言うなら第四話 「岡山ステン所」 と、続く第五話 「岡山ハイカラ勧商場」 でしょうか。
ただ単に 「怖い」 だけではありません。時代を背景に、岡山という限られた地域ならではの風習や方言が、人それぞれの生き方が綴られています。その文章は独特で、他の追随を許しません。私はこんなのを、時折無性に読みたくなります。
この本を読んでみてください係数 85/100
◆岩井 志麻子
1964年岡山県和気郡和気町生まれ。
岡山県立和気閑谷高等学校商業科卒業。
作品 「ぼっけえ、きょうてい」「「チャイ・コイ」「夜啼きの森」「でえれぇ、やっちもねえ」「自由戀愛」「現代百物語」シリーズ 他多数
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