『妖の掟』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/06 『妖の掟』(誉田哲也), 作家別(は行), 書評(あ行), 誉田哲也

『妖の掟』誉田 哲也 文春文庫 2022年12月10日第1刷

ヤクザ×警察×吸血鬼 誉田哲也史上、最強のヒロイン・紅鈴 原点妖の華再び。ノワール×ホラー炸裂!

時代を越えて生きる一族、闇神 (やがみ) の紅鈴と欣治。ある夜、暴行されていた情報屋の圭一を助けたことから親しくなる。圭一の仕事を手伝ううち、大和会系組長三人殺しに関わることに。一方、紅鈴たちに忍び寄る影もあり・・・・・・・。闇夜にヤクザと警察とこの世ならぬものが入り乱れる。誉田ワールド全開、傑作ノワール! (文春文庫)


① あやしい。あやしげな。また、もののけ。
② なまめかしい。あでやか。
③ わざわい。

紅鈴|四百年生き続ける不老不死の吸血鬼・闇神。歳は二十歳そこそこで、極めて美形。
欣治|紅鈴が 「血分け」 した唯一人の男。闇神となって二百年。二人は無二のパートナーである。
圭一|ひょんなことから、紅鈴と欣治と同居することに。物語は、圭一がする仕事が困難を極め、それを見かねた紅鈴と欣治が手助けするというところから始まります。闇神である二人にしてみれば、圭一が悩むそれは、いともたやすい事でした。

なんと十七年ぶりのシリーズ二作目である。
誉田哲也は二〇〇三年、『ダークサイド・エンジェル紅鈴 妖の華』 (学習研究社) でデビュー。四百年生き続ける日本古来の吸血鬼 「闇神」 を主軸にした伝奇ホラーであるとともに、刑事たちが闇神に殺された不可思議な死体の真相究明に奔走する警察小説でもある。七年後の二〇一〇年に、大幅な加筆・改稿を施し 『妖の華』 として文春文庫入りした。
本書はその 『妖の華』 の三年前を描いた前日譚である。

四百年生きる紅鈴と、闇神になって二百年の欣治は、ヤクザに袋叩きに遭っている辰巳圭一を助ける。ちょうど住む場所を探しているところだったふたりは、半ば恩を着せるような形で圭一の部屋に同居するようになった。

圭一はヤクザからの依頼で敵対組織に盗聴器を仕掛けるなどの仕事をしていたが、ある日、銃もナイフも使わずに組長三人を殺せるヒットマンを手配しろという無茶苦茶な命令を受ける。逆らえば殺される。そんな圭一に、紅鈴と欣治はまさに自分たちにうってつけだと腰を上げるのだが - 。

ヤクザの抗争に巻き込まれ、さらには紅鈴と欣治の正体を知る何者かも動き出す。欣治はなぜ闇神になったのか。『妖の華』 ではすでに死んでいた欣治にいったい何が起きたのか。それらの謎が解かれると同時に、闇神とは何なのかという存在そのものの謎へも切り込んでいく。(解説より)

武闘派ヤクザの組長・藤田からの要求は無理で無謀で、圭一には端から不可能に思われました。案の定、探せどそんな仕事を引き受けようなどという人物は現れず、万が一見つからなければ、今度は圭一が痛い目に遭います。殺されるかもしれません。

絶望し、遂には欣治と紅鈴に自分がいま置かれている窮状を白状した圭一は、それでも、今や “親友” のような存在になりつつある二人に対し、三人もの人間を殺してほしいなどとは口が裂けても言えません。

彼は人が好く、また、闇神が持つ能力を大きく見誤っていました。恐縮しきりの圭一に、

面白そうじゃん。あたしらが一番得意な仕事かもしんないよ。生身の人間には不可能な殺し方をすればいいんだから

さも何でもなさそうに、紅鈴はそう言ったのでした。

この本を読んでみてください係数  85/100

◆誉田 哲也
1969年東京都生まれ。
学習院大学経済学部経営学科卒業。

作品 「妖の華」「アクセス」「ストロベリーナイト」「ハング」「あなたが愛した記憶」「背中の蜘蛛」「主よ、永遠の休息を」「レイジ」他多数

関連記事

『悪人』(吉田修一)_書評という名の読書感想文

『悪人』吉田 修一 朝日文庫 2018年7月30日第一刷 福岡市内に暮らす保険外交

記事を読む

『歩いても 歩いても』(是枝裕和)_書評という名の読書感想文

『歩いても 歩いても』是枝 裕和 幻冬舎文庫 2016年4月30日初版 今日は15年前に亡くなった

記事を読む

『スクラップ・アンド・ビルド』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文

『スクラップ・アンド・ビルド』羽田 圭介 文芸春秋 2015年8月10日初版 今回の芥川賞の

記事を読む

『入らずの森』(宇佐美まこと)_書評という名の読書感想文

『入らずの森』宇佐美 まこと 祥伝社文庫 2016年12月31日第6刷 陰惨な歴史

記事を読む

『あん』(ドリアン助川)_書評という名の読書感想文

『あん』ドリアン助川 ポプラ文庫 2015年4月15日第一刷 線路沿いから一本路地を抜けたところに

記事を読む

『オロロ畑でつかまえて』(荻原浩)_書評という名の読書感想文

『オロロ畑でつかまえて』 荻原 浩 集英社 1998年1月10日第一刷 萩原浩の代表作と言えば、

記事を読む

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』(江國香織)_書評という名の読書感想文

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』江國 香織 集英社 2002年3月10日第一刷 It

記事を読む

『マチネの終わりに』(平野啓一郎)_書評という名の読書感想文

『マチネの終わりに』平野 啓一郎 朝日新聞出版 2016年4月15日第一刷 物語は、中年にさしか

記事を読む

『ジウⅡ 警視庁特殊急襲部隊 SAT 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ジウⅡ 警視庁特殊急襲部隊 SAT 』誉田 哲也 中公文庫 2021年2月25日 改版発行

記事を読む

『パトロネ』(藤野可織)_書評という名の読書感想文

『パトロネ』藤野 可織 集英社文庫 2013年10月25日第一刷 同じ大学に入学した妹と同居す

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『天使のにもつ』(いとうみく)_書評という名の読書感想文

『天使のにもつ』いとう みく 双葉文庫 2025年3月15日 第1刷

『救われてんじゃねえよ』(上村裕香)_書評という名の読書感想文

『救われてんじゃねえよ』上村 裕香 新潮社 2025年4月15日 発

『我らが少女A (上下)』 (高村薫)_書評という名の読書感想文

『我らが少女A (上下)』高村 薫 毎日文庫 2025年5月10日

『黒猫亭事件』(横溝正史)_書評という名の読書感想文

『黒猫亭事件』横溝 正史 角川文庫 2024年11月15日 3版発行

『一心同体だった』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『一心同体だった』山内 マリコ 集英社文庫 2025年4月25日 第

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑