『禁断領域 イックンジュッキの棲む森』(美原さつき)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/06
『禁断領域 イックンジュッキの棲む森』(美原さつき), 作家別(ま行), 書評(か行), 美原さつき
『禁断領域 イックンジュッキの棲む森』美原 さつき 宝島社文庫 2023年3月21日第1刷発行
コンゴの密林での道路建設計画。惨殺死体に正体不明の千切れた腕。人類の在り方を問う怒涛のパニックサスペンス
大学院で霊長類学を専攻する季華が所属する研究室に、米国企業からコンゴでの道路建設に関する環境アセスメントへの協力依頼が舞い込む。調査対象であるボノボの生息地を目指してコンゴの奥地を進む調査隊。彼らは森の中から助けを求めにやってきた少年に出会う。その矢先、調査地付近の村で人々が何者かに惨殺され - 。霊長類学の聖地で繰り広げられる、衝撃のパニックサスペンス! (宝島社文庫)
2023年 第21回 『このミステリーがすごい! 』 大賞 文庫グランプリ受賞作
いろいろと、思うところはあるかもしれません。主人公の言動の “度が過ぎる” とか、全体的にやや “緊張感に欠ける” とか。読んだあなたがどう思うかですが、言えるのは、それでも私は一気呵成に読んでしまいました、ということです。話の展開に引き込まれ、何より密林に潜む謎の生物の正体が知りたかったからです。
物語の始まりは、アフリカ大陸の中央部に位置する広大なコンゴ民主共和国 (かつてのザイール共和国) を滔々と流れる大河、コンゴ川の北岸。この地域に棲息するチンパンジーは、コンゴ川を泳いで渡るという。従来の常識では考えられないこの情報の真偽を確かめるべく現地に赴いた霊長類学者が、川岸の土壌に奇怪な足跡を発見する。おそらく霊長類のものと思われるが、規格外れの大きさだった。もしやこれは、未知の霊長類なのか?
・・・・・・・と、この魅惑的なプロローグで幕を開けるのが、美原さつきの第一長編 『禁断領域 イックンジュッキの棲む森』。コンゴの広大なジャングルを主な舞台とする、それこそマイクル・クライトンばりの壮大な秘境冒険小説だ。
*
小説の主人公は、東京都府中市にある公立大学の修士課程に在籍する大学院生・父堂季華。専攻は霊長類学、研究テーマは野生のニホンザルの生態。身長は150センチと小柄なうえに童顔なので、下手をすると中学生に間違われることもあるが、性格はおそろしく負けん気が強く、傍若無人独立独歩。無類のサル好きで、(ヒト以外の) 霊長類が最優先。人間にはまるで興味がなく、メイクやファッションにも気を遣わない。そんな季華は、ある日、指導教員にあたる霊長類学者の黒澤博義教授から、願ってもない話を持ちかけられる。コンゴで鉱物資源運搬のための道路建設が予定されているが、それに伴う環境アセスメントの一環として、工事予定範囲に生息する希少類人猿ボノボの生態を調査する計画がある。ついては、黒澤教授率いる調査チームに加わり、現地に同行してほしい・・・・・・・。
まだ大学院生で、ろくな実績もない季華にとっては降って湧いたような幸運。二つ返事でOKした彼女は、同じ研究室の先輩や、依頼元である世界的建設企業ゴールドフロンティアの人間とともにアフリカへ飛ぶ。しかし、チームにはなぜか、幻の類人猿 “ライオンイーター” に入れ込むあまり学会を追われた伝説の霊長類学者、広瀬哲郎が加わっていた。(解説より)
※幻の類人猿・ライオンイーター? では、タイトルにある “イックンジュッキ” とは何なのか。何ものなのか? はたして季華を含む調査チームの一行は、新種の類人猿とめぐり会えるのか。彼らの調査対象はあくまでボノボであったはずが、事態はやがてボノボどころではなくなっていきます。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆美原 さつき
1986年大阪府大阪市生まれ。
滋賀県立大学・滋賀県立大学大学院では環境動態学を専攻。現在は衛生管理会社に勤務。第21回 『このミステリーがすごい! 』 大賞・文庫グランプリを受賞し、本作でデビュー。
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