『さよなら、田中さん』(鈴木るりか)_書評という名の読書感想文

『さよなら、田中さん』鈴木 るりか 小学館 2017年10月17日初版

花実はじつにあっけらかんとしています。自分の家が貧乏であること。母が(建築現場や解体現場で)力仕事をしていること。死んだと母は言うけれど、顔さえ知らぬ父親は実は行方知れずで、罪人として囚われているのかもしれないということ、などなど・・・・・・・

さまざま思いはあるものの、花実はそれらの「逆境」をものともしません。内に抱えてあれこれ考えはするものの、彼女は簡単に落ち込んだりしません。今ある現状をしかと認識し、出来得る限りポジティブであろうと頑張ります。

強いというより、むしろ花実は〈賢い〉のだと思います。賢いのは、母もまたそう。母と花実は、わが身にかかる「不幸」を単に不幸と考えず、笑い飛ばせるだけの「知恵」があります。

感心し、感動し、胸の詰まる思いがします。もしかするとあなたは、涙するかも知れません。

田中花実は小学6年生。ビンボーな母子家庭だけれど、底抜けに明るいお母さんと、毎日大笑い、大食らいで過ごしている。そんな花実とお母さんを中心とした日常の大事件やささいな出来事を、時に可笑しく、時にはホロッと泣かせる筆致で描ききる。今までにないみずみずしい目線と鮮やかな感性で綴られた文章には、新鮮な驚きが。

友人とお父さんのほろ苦い交流を描く 「いつかどこかで」、お母さんの再婚劇に奔走する花実の姿が切ない 「花も実もある」、小学4年生時の初受賞作を大幅改稿した 「Dランドは遠い」、田中母娘らしい七五三の思い出を綴った 「銀杏拾い」、中学受験と、そこにまつわる現代の毒親子を子供の目線でみずみずしく描ききった 「さよなら、田中さん」。全5編収録。(小学館)

※〈編集者からのおすすめ情報〉を紹介しておきます。ぜひ手に取ってみてください。

この秋(昨年10月)、出版界の話題をさらう新人作家がデビューします。その名は、鈴木るりか。平成15年生まれの中学二年生。小学館が主催する「12歳の文学賞」史上初3年連続大賞受賞。その際、あさのあつこ氏、石田衣良氏、西原理恵子氏ら先生方から大絶賛を受けましたが、すごいのはその先です。受賞作をもとに、連作短編集に仕上げるため書き下ろし原稿を依頼したのですが、その進化がめざましく、3編の素晴らしい原稿が上がってきました。著者14歳の誕生日に、待望のデビュー作を刊行します。是非、この新しい才能を感じてください。(小学館webサイトより)

この本を読んでみてください係数  85/100

◆鈴木 るりか
2003年10月17日東京都生まれ。
史上初、小学4年生、5年生、6年生時に3年連続で小学館主催『12歳の文学賞』大賞を受賞する。現在、都内の中学校2年生在学中。好きな作家:志賀直哉、吉村昭

関連記事

『信仰/Faith』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文

『信仰/Faith』村田 沙耶香 文藝春秋 2022年8月10日第3刷発行 なあ、俺

記事を読む

『しろがねの葉』(千早茜)_書評という名の読書感想文

『しろがねの葉』千早 茜 新潮社 2023年1月25日3刷 男たちは命を賭して穴を

記事を読む

『身の上話』(佐藤正午)_書評という名の読書感想文

『身の上話』佐藤 正午 光文社文庫 2011年11月10日初版 あなたに知っておいてほしいのは、人

記事を読む

『スナーク狩り』(宮部みゆき)_書評という名の読書感想文

『スナーク狩り』宮部 みゆき 光文社文庫プレミアム 2025年3月30日 13刷発行

記事を読む

『さみしくなったら名前を呼んで』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『さみしくなったら名前を呼んで』山内 マリコ 幻冬舎 2014年9月20日第一刷 いつになれば、私

記事を読む

『余命二億円』(周防柳)_書評という名の読書感想文

『余命二億円』周防 柳 角川文庫 2019年3月25日初版 工務店を営んでいた父親

記事を読む

『錠剤F』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『錠剤F』井上 荒野 集英社 2024年1月15日 第1刷発行 ひとは、「独り」 から逃れら

記事を読む

『正義の申し子』(染井為人)_書評という名の読書感想文

『正義の申し子』染井 為人 角川文庫 2021年8月25日初版 物語のスピードに振

記事を読む

『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』(滝口悠生)_書評という名の読書感想文

『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』滝口 悠生 新潮文庫 2018年4月1日発行 東北へのバ

記事を読む

『世界から猫が消えたなら』(川村元気)_書評という名の読書感想文

『世界から猫が消えたなら』川村 元気 小学館文庫 2014年9月23日初版 帯に「映画化決定!」

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『曾根崎心中/新装版』(角田光代 原作 近松門左衛門)_書評という名の読書感想文

『曾根崎心中/新装版』角田 光代 原作 近松門左衛門 リトルモア 2

『枯木灘』(中上健次)_書評という名の読書感想文

『枯木灘』中上 健次 河出文庫 2019年10月30日 新装新版3刷

『僕の女を探しているんだ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『僕の女を探しているんだ』井上 荒野 新潮文庫 2026年1月1日

『この本を盗む者は』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『この本を盗む者は』深緑 野分 角川文庫 2025年11月5日 8版

『いつも彼らはどこかに』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『いつも彼らはどこかに』小川 洋子 新潮文庫 2025年11月25日

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑