『ひとでちゃんに殺される』(片岡翔)_書評という名の読書感想文 

『ひとでちゃんに殺される』片岡 翔 新潮文庫 2021年2月1日発行

ひとでちゃんに殺される(新潮文庫)

表紙の絵とタイトルに、軽いノリで買ってみました。新潮文庫のための書き下ろしだそうです。可愛い顔をしたひとでちゃんが人を殺す!? いいえ、そうではありません。死ぬのは、彼女が選んだ人です。

悪魔から逃れるためには生贄を選ぶしかない

宙を舞うスキー板が、地下鉄の鉄扉が、墜落する信号機が、次々と呪われた生徒の首を断つ・・・・・・・。怪死事件が相次ぐ教室に、謎の転校生がやって来た。「縦島ひとで、十六歳です」 圧倒的な美貌で周囲を虜にし、匂い立つような闇を纏う彼女の正体は!? 助かるためには誰か一人を生贄に差し出すしかない - 悪魔に魅入られた高校生たちが迫られる究極の命の選択。戦慄の学園サスペンスホラー 。(新潮文庫)

黒い女を見たのは、昨日の早朝だった。
真っ黒な顔と身体に、足元まで伸びた髪。細い体躯にひょろ長い手脚。顔には渦巻きのような目があって、それが人間じゃないのは一目瞭然だ。その女は美味しそうに、人間の生首をぺろぺろと舐めていた。

ハッと目を覚まし、すぐに夢だということに気がついた。
けれどただの夢じゃない。トラウマのように刻まれた古い記憶が蘇る。幼い頃、境内の奥にある蔵で、その女の絵を見たことがあったのだ。

そして今日、一條は死んだ。

奴があの黒い女に殺されたのは、疑いようのない事実。
天が裁きを下したのだ。
そう思うと清々しかった。

仁志と三ツ橋。さらに率先して葵を馬鹿にしていた海老原と花田、玉井の名前を刻み込む。葵のスタンプを作った脇と、陰で全員を煽っている美園。そこまで彫ったところで、我に返った。

※物語の前半、全てはクラスの優等生・鷹守清史郎が仕組んだことでした。

チャイムが鳴ると、すぐに (担任の) 若宮が入ってきた。

「えぇっと、こんなタイミングだけど、我らが1年4組に転校生が来ました」
教室がざわつく。なんでこの状況のうちのクラスに。と思ったが、2人も生徒が減ったからかもしれない。

とてつもなく美人だった。
男子も女子も、その容姿に釘付けになっている。
若宮がドヤ顔をしながら、黒板に名前を書く。チョークの音に重ねるように、彼女は自ら話し出した。

「お父さんの転勤が多くて色んな街に住んできたけど、生まれは熊本です。9歳まで住んでいました。小さい頃から、ひとでなしのひとでちゃんって呼ばれています。仙台も、宮城県も初めてです。色々教えてください。どうぞ、よろしくお願いします」

※この人物こそが、物語の主人公・縦島ひとで、その人でした。彼女がこの学校の、このクラスに転校してきたのには、実は、訳があります。それを、今は誰も知りません。

後半になり、クラスののけ者の佐藤水色だけがひとでの正体を知ることになります。彼女が自分をひとでなしだという本当の理由を、身をもって知ることになります。

この本を読んでみてください係数 80/100

ひとでちゃんに殺される(新潮文庫)

◆片岡 翔
1982年北海道生まれ。

作品 2014年に映画 「1/11」 を監督。脚本家として 「町田くんの世界」 「I”s」 「トーキョーエイリアンブラザーズ」 「きいろいゾウ」 などを手がける。‘17年、初の小説 『さよなら、ムッシュ』 を刊行。他に 『あなたの右手は蜂蜜の香り』 がある。

関連記事

『人間に向いてない』(黒澤いづみ)_書評という名の読書感想文

『人間に向いてない』黒澤 いづみ 講談社文庫 2020年5月15日第1刷 人間に向いてない

記事を読む

『金曜のバカ』(越谷オサム)_書評という名の読書感想文

『金曜のバカ』越谷 オサム 角川文庫 2012年11月25日初版 金曜のバカ (角川文庫)

記事を読む

『墓標なき街』(逢坂剛)_書評という名の読書感想文

『墓標なき街』逢坂 剛 集英社文庫 2018年2月25日初版 墓標なき街 (集英社文庫)

記事を読む

『櫛挽道守(くしひきちもり)』(木内昇)_書評という名の読書感想文

『櫛挽道守(くしひきちもり)』木内 昇 集英社文庫 2016年11月25日第一刷 櫛挽道守 (

記事を読む

『ポトスライムの舟』(津村記久子)_書評という名の読書感想文

『ポトスライムの舟』津村 記久子 講談社 2009年2月2日第一刷 ポトスライムの舟 (講談社

記事を読む

『ハラサキ』(野城亮)_書評という名の読書感想文

『ハラサキ』野城 亮 角川ホラー文庫 2017年10月25日初版 ハラサキ (角川ホラー文庫)

記事を読む

『私のなかの彼女』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『私のなかの彼女』角田 光代 新潮文庫 2016年5月1日発行 私のなかの彼女 (新潮文庫)

記事を読む

『箱庭図書館』(乙一)_書評という名の読書感想文

『箱庭図書館』乙一 集英社文庫 2013年11月25日第一刷 箱庭図書館 (集英社文庫) 僕

記事を読む

『羊と鋼の森』(宮下奈都)_書評という名の読書感想文

『羊と鋼の森』宮下 奈都 文春文庫 2018年2月10日第一刷 羊と鋼の森 (文春文庫) 高

記事を読む

『望郷』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

『望郷』湊 かなえ 文春文庫 2016年1月10日第一刷 望郷 (文春文庫)  

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

『カインの傲慢/刑事犬養隼人』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『カインの傲慢/刑事犬養隼人』中山 七里 角川文庫 2022年6月2

『カゲロボ』(木皿泉)_書評という名の読書感想文

『カゲロボ』木皿 泉 新潮文庫 2022年6月1日発行

『あたしたち、海へ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『あたしたち、海へ』井上 荒野 新潮文庫 2022年6月1日発行

『白昼夢の森の少女』(恒川光太郎)_書評という名の読書感想文

『白昼夢の森の少女』恒川 光太郎 角川ホラー文庫 2022年5月25

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』(李龍徳)_書評という名の読書感想文

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』李 龍徳 河出書房 2022年3月

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑