『藤色の記憶』(あさのあつこ)_書評という名の読書感想文
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『藤色の記憶』(あさのあつこ), あさのあつこ, 作家別(あ行), 書評(は行)
『藤色の記憶』あさの あつこ 角川文庫 2020年12月25日初版
※本書は、2012年9月に講談社より刊行された単行本 『白兎2 地に埋もれて』 を加筆修正し、改題のうえ文庫化したものです。
心中間際、心変わりした恋人によって地中に埋められた優枝。掘り起こし助けてくれたのは白兎という見知らぬ少年だった。彼は恋人への復讐をそそのかすが、どこかからかうような態度に、優枝は戸惑うしかなかった。そこへ突然、生き別れの弟・慶介から連絡が届く。母が手遅れの病で入院しており、優枝に逢いたがっていると。母はかつて父と自分を捨て家を出ていた。逡巡の末、優枝は白兎を伴い、故郷へと旅立つが・・・・・・・。(角川文庫)
目が覚めると土の中にいた。
埋もれているのだと、すぐに悟った。
ああ、わたしは土の中にいる。(本文より)
埋めたのは、不倫相手の日出彦でした。彼は四十歳を越え、妻も子もいる中年男で、総合病院で麻酔科の医師をしています。
優枝と日出彦が出会ったのは、彼の母親の葬儀の時でした。優枝は葬祭センターの会場係でした。どこから見ても立派な大人の日出彦は、母親の葬儀の際、人目もはばからず号泣したのでした。
彼は、極端なマザコン男でした。皆が引くなかで、優枝は懸命に日出彦を宥めます。全ては、速やかに葬儀を進行するためでした。それがいつの間にやら同情心に変化しています。日出彦に本気で哀れを感じ、やがて付き合うようになり、すぐに男女の仲になります。
一緒に死のうと言ったのは、日出彦の方でした。
※優枝を土の中から掘り出したのが、白兎という名の少年でした。冒頭から、いきなり白兎が現れた!?
ということは・・・・・・・
この本を読んでみてください係数 85/100
◆あさの あつこ
1954年岡山県英田郡美作町(現:美作市)湯郷生まれ。
青山学院大学文学部卒業。
作品 「ほたる館物語」「バッテリー」「バッテリーⅡ」「たまゆら」他多数
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