『執着者』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『執着者』櫛木 理宇 創元推理文庫 2024年1月12日 初版 

すべての油断が地獄の始まり。この地獄から誰か助けて 戦慄のサイコサスペンス

幾度逃げても現れる、正体不明の老人。圧倒的恐怖の先に待つ驚愕の真相とは -

平凡な家庭に育ち、26年間大きな恐怖に襲われたことがなかった会社員・友安小輪の生活は、ある日を境に一変した。恋人と同棲するアパートに突如謎の老人が現れ、執拗ないやがらせを始めたのだ。恋人は不自然に委縮し、交番の警官はまともに取り合おうとしない。一方、都内に住む若夫婦が老人に襲撃され、夫は過剰殺傷の末に死亡、妻が攫われるという事件が起きる。幼い頃に姉を殺害されたことがきっかけで刑事になった “事件マニア“ の佐坂湘は、くせ者ながら優秀な警視庁捜査一課の捜査官・北野谷輝巳と組み、妻の行方を追うが・・・・・・・。老人による不可解な犯罪、その先に待つ衝撃の結末とは。戦慄のサイコサスペンス。(創元推理文庫)

問題は、その人物が八十歳にもなろうかという老人だったことです。正体不明の老人に何があってつけ狙われるのか - 被害者たちは、その理由がわかりません。 

友安小輪 (ともやす・さわ) は会社員。仕事がきっかけで知り合った恋人・岸智保 (きし・ともやす) と一緒に暮らし始める。だが、二人が暮らすアパートに奇妙な老人が現れ、さまざまな嫌がらせをするようになった。智保は老人が持つ風鈴の音になぜか異様な怯えを示し、じっと息をひそめているばかり。通報を受けてやって来た警官は 「相手は高齢者だから」 と小輪の訴えを軽くあしらった。

一方、都内で殺人と誘拐事件が起きる。老人が若い建築士の男性を絞殺し、その妻を連れ去ったのだ。荻窪署の佐坂湘 (ささか・しょう) は、警視庁捜査一課の北野谷輝巳 (きたのや・てるみ) と組んで捜査に臨む。

そして、一人暮らしの大学院生・丹下薫子 (たんげ・かおるこ) は、奇妙な老人によるストーキングに悩まされていた。彼女は警察に相談するものの、警官は真剣に受け止めようとしない。その一方で、老人の行動は次第にエスカレートし、強い悪意を示すものになっていた・・・・・・・。

佐坂たちの追う殺人・拉致事件と、二つのストーカー事件。老人が関わっていること以外に共通点の見えない三つのできごとは、どうつながっているのか・・・・・・・? (解説より)

いくつもの事件とそれに関わった何人もの人物が登場します。何の関係もなさそうに思える人物が、実は事件の重要な鍵を握っていたり、いかにもな人物が実はさほど悪人ではなかったり。見極めるのは、大層難しいと思います。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆櫛木 理宇
1972年新潟県生まれ。
大学卒業後、アパレルメーカー、建設会社などの勤務を経て、執筆活動を開始する。

作品 「ホーンテッド・キャンパス」「赤と白」「侵蝕 壊される家族の記録」「209号室には知らない子供がいる」「死刑にいたる病」「ぬるくゆるやかに流れる黒い川」「氷の致死量」他多数

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