『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文
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『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子), 作家別(や行), 書評(あ行), 柚木麻子
『あいにくあんたのためじゃない』柚木 麻子 新潮社 2024年3月20日発行
差別、偏見、思い込み - 他人に貼られたラベルはもういらない、自分で自分を取り返せ!! この世を生き抜く勇気が湧く、最高最強のエンパワーメント短篇集!
![](http://choshohyo.com/wp-content/uploads/2024/04/61ErRYGjvRL._AC_UL320_.jpg)
とにもかくにも容赦がない! ページを開いたが最後、誰も傍観者じゃいられない。万城目学
過去のブログ記事が炎上中のラーメン評論家、夢を語るだけで行動には移せないフリーター、もどり悪阻とコロナ禍で孤独に苦しむ妊婦、番組の降板がささやかれている落ち目の元アイドル・・・・・・・いまは手詰まりに思えても、自分を取り戻した先につながる道はきっとある。この世を生き抜く勇気がむくむくと湧いてくる、全6篇。(新潮社)
身に覚えがない - はずがありません。差別や偏見や思い込みの、被害者だっり加害者だったり、遠くで見ているだけの傍観者だったりしたことが。当の本人はそれにいつ気づき、どう対処すればよいのでしょう。
声を上げる勇気がありますか。背中を押してくれる人はいませんか。あなたの敵は、誰ですか?
著者は、女性同士の連帯を小説のテーマにすることが多いが、その素晴らしさだけでなく、難しい部分やうまくいくばかりでない現実も書いているところが私は好きだ。この短編集の中にも、こんなふうに力を合わせて前に進めたらいいねと痛快な気持ちになる結末もあれば、気持ちがすれ違うもどかしさが描かれているものもあって考えさせられる。
そして、理不尽な扱いを受けた人々の反撃は清々しく、読んでいるとスカッとした気分になると同時に、冷たい傍観者や人の痛みを想像しない野次馬だったこともきっとある自分に、ヒヤッとしてしまった。強烈なパンチを喰らう登場人物たちには、ざまあみろと言いたくなるけれど、著者は彼らを徹底的に追い詰めることはしない。出口を完全には塞がず、やり直すチャンスを残しているところにホッとする。
私が一番好きなのは 「商店街マダムショップは何故潰れないのか? 」 というタイトルの一編だ。そうそう! 長く続いている商店街って、誰が買うのかわからない謎の高額雑貨やら、妙な具合にデコラティブな衣服が並んでいる時間の止まったブティックみたいな店がなぜだか残っていることが多い。
ああいう店の経営はいったいどうなっているのか、私も不思議に思っていたけれど、知人と前を通りかかる時にネタにするくらいだ。そこからこんなユニークな物語を生み出せるなんて! 小説家ってすごいなあ・・・・・・・。
マダムショップが気になってる人、ぜひ読んでみてください。(高頭佐和子/WEB本の雑誌より)
※冒頭の 「めんや 評論家おことわり」 を読んで、ある場面で、少し私は泣きました。それほどのことではなかったかもしれません。ただ、その時の状況を想像すると、私はいたたまれなくなってしまいます。つらすぎて、見ていられなくなります。余計なお世話だとわかってはいても・・・・・・・
この本を読んでみてください係数 85/100
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◆柚木 麻子
1981年東京都世田谷区生まれ。立教大学文学部フランス文学科卒業。
作品 「終点のあの子」「本屋さんのダイアナ」「ランチのアッコちゃん」「伊藤くんA to E」「ナイルパーチの女子会」「その手をにぎりたい」「BUTTER」他多数
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