『逆転美人』(藤崎翔)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
『逆転美人』(藤崎翔), 作家別(は行), 書評(か行), 藤崎翔
『逆転美人』藤崎 翔 双葉文庫 2024年2月13日第15刷 発行
美しすぎるのは不幸なのか? 美人であるがゆえに引き寄せられる壮絶な事件。生々しい手記の違和感に気づいた瞬間、追いかけていた景色が一気に崩される。巧妙すぎるトリックに茫然自失。この衝撃は一生モノだ。
美人に生まれたのは罪ですか - ? 抜群の美貌のせいで幼少期から何度も犯罪やいじめの被害に遭い、不幸ばかりの人生を歩んできたシングルマザーの香織 (仮名)。とうとう娘の学校の教師にまで襲われ、その事件が大々的に報道されたのを機に、手記 『逆転美人』 を出版したのだが、それは社会を震撼させる大事件の幕開けだった。果たして 『逆転美人』 の本当の意味とは? 全ミステリーファン必読、文学史に残る伝説級超絶トリックに驚愕せよ!! (双葉文庫)
いくらなんでも 「文学史に残る伝説級超絶トリック」 とは大げさな・・・・・・・。(よくあることではありますが) 煽り文句があまりに過ぎるとかえって読む気が失せる - というあなたにこそ、読んでもらいたいと思う一冊です。“並外れて工夫がなされた小説“ であることは間違いありません。
何れ劣らぬ超絶美人の、母と娘が登場します。ところが、二人は思うほどには上手く生きられません。あらゆる男に言い寄られ、その気がないと断ると、お高くとまっていると逆恨みされることもしばしばで、胸襟を開いて語り合える友さえいないのでした。
さて、この先二人はどんな人生を歩むのか? 香織が手記を出版するに至った経緯とその顛末は? 終わり間際、予想もしない展開が待ち受けています。
まったく本の内容に関する知識を持たずに、読んだ方がいい作品がある。藤崎翔の新刊は、そのような一冊だ。できれば本の帯の惹句も、裏表紙にある紹介文も、知らない方がいい。もちろんこの書評も、読まないままにするのがベストだ。(以下省略)- 細谷正充 (小説推理 2022年12月号掲載)
なので、これ以上は書きません。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆藤崎 翔
1985年茨城県牛久市生まれ。
東京都在住。高校卒業後、6年間お笑い芸人として活動。
作品 2014年に初めて書いた長編ミステリ 「神さまの裏の顔」 で第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、小説家デビュー。他に「私情対談」「こんにちは刑事(デカ)ちゃん」「あなたに会えて困った」「守護霊刑事」などがある。
関連記事
-
『杳子・妻隠』(古井由吉)_書評という名の読書感想文
『杳子・妻隠』古井 由吉 新潮文庫 1979年12月25日発行 古井由吉という名前は、昔から知っ
-
『Blue/ブルー』(葉真中顕)_書評という名の読書感想文
『Blue/ブルー』葉真中 顕 光文社文庫 2022年2月20日初版1刷 ※本作は書
-
『哀原』(古井由吉)_書評という名の読書感想文
『哀原』古井 由吉 文芸春秋 1977年11月25日第一刷 原っぱにいたよ、風に吹かれていた、年甲斐
-
『黒冷水』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文
『黒冷水』羽田 圭介 河出文庫 2005年11月20日初版 兄の部屋を偏執的にアサる弟と、罠(
-
『笑う山崎』(花村萬月)_書評という名の読書感想文
『笑う山崎』花村 萬月 祥伝社 1994年3月15日第一刷 「山崎は横田の手を握ったまま、無表情に
-
『おはなしして子ちゃん』(藤野可織)_書評という名の読書感想文
『おはなしして子ちゃん』藤野 可織 講談社文庫 2017年6月15日第一刷 理科準備室に並べられた
-
『純喫茶』(姫野カオルコ)_書評という名の読書感想文
『純喫茶』姫野 カオルコ PHP文芸文庫 2016年3月22日第一刷 あれは、そういうことだっ
-
『海馬の尻尾』(荻原浩)_書評という名の読書感想文
『海馬の尻尾』荻原 浩 光文社文庫 2020年8月20日初版 二度目の原発事故でど
-
『買い物とわたし/お伊勢丹より愛をこめて』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文
『買い物とわたし/お伊勢丹より愛をこめて』山内 マリコ 文春文庫 2016年3月10日第一刷
-
『花びらめくり』(花房観音)_書評という名の読書感想文
『花びらめくり』花房 観音 新潮文庫 2021年12月25日4刷 「誘ってきたのは