『死者の奢り・飼育』(大江健三郎)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/06 『死者の奢り・飼育』(大江健三郎), 作家別(あ行), 大江健三郎, 書評(さ行)

『死者の奢り・飼育』大江 健三郎 新潮文庫 2022年11月25日84刷

23歳と5か月、ノーベル賞作家の出発点 芥川賞受賞 115万部突破の大ベストセラー!

死体処理室の水槽に浮沈する死骸群に託した屈折ある抒情 『死者の奢り』、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌 『他人の足』、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇 『飼育』、傍観者への嫌悪と侮蔑をこめた 『人間の羊』 など6編を収める。”閉ざされた壁のなかに生きている状態” を論理的な骨格と動的なうねりをもつ文体で描いた、芥川賞受賞当時の輝ける作品集。(新潮文庫)

6編ある中で、特に私が読みたかったのが 『飼育』 です。残酷で赤裸々で強烈な、血と汗と汚物の臭いに思わず顔を背けたくなるような - そんな話を、あの頃私はどんな思いで読んだのか。読んで正しく理解したと言えるのか。それを確かめたいと思いました。

「飼育」 については個人的な記憶がある。その年の春、座談会の速記に目を通すために文藝春秋社にでかけた私は、かなり長い小説の校正刷を示された。なにげなく二、三頁をくるうちに、そこにくりひろげられている豊饒なイメイジや奔出してつきることを知らぬ才能にひきいれられ、私はついにそれを持ち帰って熟読するにいたったのである。

それが 「飼育」 であって、大江の才能はこの作品によってはじめて完全に開花したということができるだろう。ここには 「死者の奢り」 の観念的な 〈わく組み〉 がなく、そのかわりにたとえばピエル・ガスカールをたくみに転調したみごとな文体がある。

このような残酷な話を、かくも豪奢な美のなかに展開させることのできる作家はどのような人間であろうか、と私はいぶからずにはいなかった。というのは、これは、空から降りて来た黒人兵を牛のように飼い、彼との間に牧歌的な関係を結んでいた少年が、突然兵士の囚にされ、愛する を自分の手とともに父の鉈でたたきつぶされるという話だからである。(江藤淳/解説より)

遠い昔の学生時代、大江健三郎はたしかに人気がありました。読書好きが集まると、そこでは、(大江のことを、又はその小説を) 知らない、読んでないとは言えない空気がありました。難しいことはわかりません。読むと何ごとかを強い迫力で訴えてくる、その感じだけが頼りでした。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆大江 健三郎
1935年愛媛県生まれ。2023年3月3日没、88歳。
東京大学文学部仏文科卒業。

作品 1994年、ノーベル文学賞受賞。「芽むしり仔撃ち」「個人的な体験」「万延元年のフットボール」「洪水はわが魂に及び」「新しい人よ眼ざめよ」他多数

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