『ぼくとおれ』(朝倉かすみ)_たったひとつの選択が人生を変える。ってかあ!?

公開日: : 最終更新日:2024/01/08 『ぼくとおれ』(朝倉かすみ), 作家別(あ行), 書評(は行), 朝倉かすみ

『ぼくとおれ』朝倉 かすみ 実業之日本社文庫 2020年2月15日初版

1972年9月28日。北海道の同じ病院で生まれた 「ぼく」 蒲生栄人と 「おれ」 仁村拓郎。ふたりは毎日 〈スイッチ〉 を押し、ちいさな選択を繰り返して、進学、恋愛、就職、結婚と、人生の地図を描いてきたが・・・・・・・。40歳の男ふたりが辿った交わりそうで交わらない (!?) 道筋を、昭和から平成へ移りゆく世相と絡め、巧みな筆致で紡ぎ出す。山本周五郎賞作家の珠玉作。(『地図とスイッチ』 改題) 解説/大森 望 (実業之日本社文庫)

札幌市の同じ病院で同じ日に生まれた栄人と拓郎は、幼い頃に一度だけたがいにそうとは知らずに再会し、その後はたがいにそうとは知らずに 地図上で微妙に近づいたり離れたりしながら人生を歩んでいくことになる。

ぼく= 栄人の父親は東京都庁に勤務する公務員。専業主婦の母親は、札幌の病院経営者の娘。そのため、里帰りして栄人を出産する。産後、同じ病室で しかも、となりのベッドで再会したのが、小・中学校時代の同級生 - それが、拓郎の母親だった。

その拓郎の父親は、札幌の小さな煮豆製造会社に勤務するサラリーマン。母親は高校中退後、同じ会社の工場でパートタイム労働者として働いていたときに彼と知り合って結婚した。

家庭環境のまったく違う二人が、その後の人生をそれぞれどんなふうに生きたか。人生のどこまでが生まれ落ちた境遇や社会状況によって決まり、どこまでがみずからの選択によってつくられるのか。1972年生まれたちは、いったいどんな時代を経験したのか。(解説より)

- とまあ、こんな話であるわけです。

何気に読み終えたのですが・・・・・・・ちょっと待てよ、と考えました。これって、わざわざ言い立てるほどのことなんだろうかと。

同じ病院で同じ日に生まれ、母親同士がかつての同級生だったというのは、確かに奇遇ではあります。が、おそらく言いたいのはそこではありません。それよりは、同じ時代に生まれたものの、栄人と拓郎の家庭環境がまるで違うということ。そのことが二人のその後の人生にどんな影響を及ぼしたのか。それを言わんが為の、いわば方便に過ぎません。

本当に言いたかったのは - 人生の 「どこからが」 みずからの選択によってつくられるのか - その境目こそを示したかったのだろうと。

目論見が目論見通りであるかどうかはぜひご自身で確かめてください。残念ながら、私はイマイチ納得できずにいます。栄人と拓郎、二人のどちらにも肩入れ出来ないような。結局それは “出自” のせいであるような。そんな気がしてなりません。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆朝倉 かすみ
1960年北海道小樽市生まれ。
北海道武蔵女子短期大学教養学科卒業。

作品 「肝、焼ける」「田村はまだか」「夏目家順路」「玩具の言い分」「ロコモーション」「恋に焦がれて吉田の上京」「たそがれどきに見つけたもの」「満潮」「平場の月」他多数

関連記事

『舞台』(西加奈子)_書評という名の読書感想文

『舞台』西 加奈子 講談社文庫 2017年1月13日第一刷 太宰治『人間失格』を愛する29歳の葉太

記事を読む

『真夜中のマーチ』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『真夜中のマーチ』奥田 英朗 集英社文庫 2019年6月8日第12刷 自称青年実業

記事を読む

『今だけのあの子』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『今だけのあの子』芦沢 央 創元推理文庫 2018年7月13日6版 結婚おめでとう、メッセージカー

記事を読む

『白昼夢の森の少女』(恒川光太郎)_書評という名の読書感想文

『白昼夢の森の少女』恒川 光太郎 角川ホラー文庫 2022年5月25日初版 地獄を

記事を読む

『蓮の数式』(遠田潤子)_書評という名の読書感想文

『蓮の数式』遠田 潤子 中公文庫 2018年1月25日初版 35歳のそろばん塾講師・千穂は不妊治療

記事を読む

『マッチング』(内田英治)_書評という名の読書感想文

『マッチング』内田 英治 角川ホラー文庫 2024年2月20日 3版発行 2024年2月23

記事を読む

『寡黙な死骸 みだらな弔い』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『寡黙な死骸 みだらな弔い』小川 洋子 中公文庫 2003年3月25日初版 息子を亡くした女が洋菓

記事を読む

『報われない人間は永遠に報われない』(李龍徳)_書評という名の読書感想文

『報われない人間は永遠に報われない』李 龍徳 河出書房新社 2016年6月30日初版 この凶暴な世

記事を読む

『がん消滅の罠/完全寛解の謎』(岩木一麻)_書評という名の読書感想文

『がん消滅の罠/完全寛解の謎』岩木 一麻 宝島社 2017年1月26日第一刷 日本がんセンターに勤

記事を読む

『ヒーローインタビュー』(坂井希久子)_書評という名の読書感想文

『ヒーローインタビュー』坂井 希久子 角川春樹事務所 2015年6月18日初版 「坂井希久子」で

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『私のことだま漂流記』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『私のことだま漂流記』山田 詠美 講談社文庫 2025年9月12日

『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)_書評という名の読書感想文

『同志少女よ、敵を撃て』逢坂 冬馬 ハヤカワ文庫 2025年8月15

『介護者D』 (河﨑秋子)_書評という名の読書感想文

『介護者D』 河﨑 秋子 朝日文庫 2025年11月30日 第1刷発

『曾根崎心中/新装版』(角田光代 原作 近松門左衛門)_書評という名の読書感想文

『曾根崎心中/新装版』角田 光代 原作 近松門左衛門 リトルモア 2

『枯木灘』(中上健次)_書評という名の読書感想文

『枯木灘』中上 健次 河出文庫 2019年10月30日 新装新版3刷

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑