『ぼくとおれ』(朝倉かすみ)_たったひとつの選択が人生を変える。ってか!?

『ぼくとおれ』朝倉 かすみ 実業之日本社文庫 2020年2月15日初版

ぼくとおれ (実業之日本社文庫)

1972年9月28日。北海道の同じ病院で生まれた 「ぼく」 蒲生栄人と 「おれ」 仁村拓郎。ふたりは毎日 〈スイッチ〉 を押し、ちいさな選択を繰り返して、進学、恋愛、就職、結婚と、人生の地図を描いてきたが・・・・・・・。40歳の男ふたりが辿った交わりそうで交わらない (!?) 道筋を、昭和から平成へ移りゆく世相と絡め、巧みな筆致で紡ぎ出す。山本周五郎賞作家の珠玉作。(『地図とスイッチ』 改題) 解説/大森 望 (実業之日本社文庫)

札幌市の同じ病院で同じ日に生まれた栄人と拓郎は、幼い頃に一度だけたがいにそうとは知らずに再会し、その後はたがいにそうとは知らずに 地図上で微妙に近づいたり離れたりしながら人生を歩んでいくことになる。

ぼく= 栄人の父親は東京都庁に勤務する公務員。専業主婦の母親は、札幌の病院経営者の娘。そのため、里帰りして栄人を出産する。産後、同じ病室で しかも、となりのベッドで再会したのが、小・中学校時代の同級生 - それが、拓郎の母親だった。

その拓郎の父親は、札幌の小さな煮豆製造会社に勤務するサラリーマン。母親は高校中退後、同じ会社の工場でパートタイム労働者として働いていたときに彼と知り合って結婚した。

家庭環境のまったく違う二人が、その後の人生をそれぞれどんなふうに生きたか。人生のどこまでが生まれ落ちた境遇や社会状況によって決まり、どこまでがみずからの選択によってつくられるのか。1972年生まれたちは、いったいどんな時代を経験したのか。(解説より)

- とまあ、こんな話であるわけです。

何気に読み終えたのですが・・・・・・・ちょっと待てよ、と考えました。これって、わざわざ言い立てるほどのことなんだろうかと。

同じ病院で同じ日に生まれ、母親同士がかつての同級生だったというのは、確かに奇遇ではあります。が、おそらく言いたいのはそこではありません。それよりは、同じ時代に生まれたものの、栄人と拓郎の家庭環境がまるで違うということ。そのことが二人のその後の人生にどんな影響を及ぼしたのか。それを言わんが為の、いわば方便に過ぎません。

本当に言いたかったのは - 人生の 「どこからが」 みずからの選択によってつくられるのか - その境目こそを示したかったのだろうと。

目論見が目論見通りであるかどうかはぜひご自身で確かめてください。残念ながら、私はイマイチ納得できずにいます。栄人と拓郎、二人のどちらにも肩入れ出来ないような。結局それは “出自” のせいであるような。そんな気がしてなりません。

この本を読んでみてください係数 80/100

ぼくとおれ (実業之日本社文庫)

◆朝倉 かすみ
1960年北海道小樽市生まれ。
北海道武蔵女子短期大学教養学科卒業。

作品 「肝、焼ける」「田村はまだか」「夏目家順路」「玩具の言い分」「ロコモーション」「恋に焦がれて吉田の上京」「たそがれどきに見つけたもの」「満潮」「平場の月」他多数

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