『雪の花』(吉村昭)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2025/01/17
『雪の花』(吉村昭), 作家別(や行), 吉村昭, 書評(や行)
『雪の花』吉村 昭 新潮文庫 2024年12月10日 28刷
2025 1.24 FRI 全国公開 映画化! 出演:松坂桃李 芳根京子 役所広司 監督:小泉堯史

無名の町医者は、どのように日本を救ったのか? 雪の花 - ともに在りて -
数年ごとに大流行して多くの人命を奪う天然痘。その疫病に絶対確実な予防法が異国から伝わったと知った福井藩の町医・笠原良策は、私財をなげうち生命を賭して種痘の苗を福井に持ち込んだ。しかし天然痘の膿を身体に植え込むなどということに庶民は激しい恐怖心をいだき、藩医の妨害もあっていっこうに広まらなかった・・・・・・・。周囲から狂人とさげすまれながら天然痘と闘った一町医の感動の生涯。(新潮文庫)
人の命を救いたい。良策の思いは、ただその一念でした。しかし、思うほど上手くは行きません。知識も技術もすべて手に入れたのに、種痘を望む人が集まりません。役人のやる気のなさと、古来の漢方を信じる医者らの妨害のせいでした。良策にはなすすべがありません。種痘は続かず、そのうち彼は狂人呼ばわりされるようになります。
この 『雪の花』 は 『めっちゃ医者伝』 が改題されたものである。『めっちゃ医者伝』 は 「新潮少年文庫」 の一冊として昭和四十六年に刊行された。今回の新潮文庫化にあたり、笠原家に遺っていた良策関係の資料を参考に、大幅に手が加えられた。
天然痘ウイルスと人間は、古代からつきあってきた。中国では紀元前十二世紀、インドでは二千年前から流行があったことが知られている。六世紀になってヨーロッパにも侵入、日本には聖武天皇の天平七年 (七三五)、筑紫から新羅へ流れついて帰国した漂民によってもたらされたという。いらい良策の時代まで千百年間、周期的に大小の流行をくり返し、死亡率も高かった。幸い死に到らなくてもアバタが残り、越前ではこれをメッチャといった。「アバタのある人」 ほどの意味である。
天然痘の伝染力の強さは、現在、“世紀末の黒死病“ といわれるエイズ (後天性免疫不全症候群) の比ではなかった。大八車に死体を乗せて行き交う流行期の凄惨な光景は、この小説の冒頭の部分で、想像力豊かに再現されている。(解説より)
※この小説のクライマックスは、おそらく二つあります。一つは、志を一にした者同士が連携し、助け合った末に、ついに痘苗を手にし種痘を実施、成功を収めるまでのところ。そしてもう一つが、京都でした種痘により得た痘苗をもって、良策が被験者共々険しい雪山を越えて福井へ “凱旋“ するところ、ではないかと。いずれにせよ、これは読んでおくべき一冊だと。知られざる歴史の真実と苦闘の果てに得た感動、同時に二つを味わうことができます。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆吉村 昭 1927年東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。2006年没。
作品 1966年 『星への旅』 で太宰治賞を受賞。同年発表の 『戦艦武蔵』 で記録文学に新境地を拓き、同作品や 『関東大震災』などにより、’73年菊池寛賞を受賞。主な作品に 『ふぉん・しいほるとの娘』 (吉川英治文学賞)、『冷い夏、熱い夏』 (毎日芸術賞)、『破獄』 (読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞)、『天狗争乱』 (大佛次郎賞) 等がある。
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