『真夜中のマーチ』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/09 『真夜中のマーチ』(奥田英朗), 作家別(あ行), 奥田英朗, 書評(ま行)

『真夜中のマーチ』奥田 英朗 集英社文庫 2019年6月8日第12刷

自称青年実業家のヨコケンこと横山健司は、仕込んだパーティーで三田総一郎と出会う。財閥の御曹司かと思いきや、単なる商社のダメ社員だったミタゾウとヨコケンは、わけありの現金強奪をもくろむが、謎の美女クロチェに邪魔されてしまう。それぞれの思惑を抱えて手を組んだ3人は、美術詐欺のアガリ、10億円をターゲットに完全犯罪を目指す! が・・・・・・・!? 直木賞作家が放つ、痛快クライム・ノベルの傑作。(集英社文庫)

連日、うだるような暑さが続いています。

2週間ほどは経ったのでしょうか。寝ている間中冷房をかけ、起きるとすぐに冷房を切り、着替えを済ませ一階の台所へ行き、すぐにまた冷房を入れます。たいていは、午前7時頃のことです。

玄関横のトイレで用を足し、外にある幾鉢かの花に水をやり、朝刊を取り込んで台所へ戻って来たところで、もう汗をかいている - 着替えたばかりのシャツが早くも台無しになり、シャツと肌とがへばり付くのが何とも不快な - そんな日々であるわけです。

朝刊を読みながらトースト一枚とアイスコーヒー一杯の朝食を済ませると、椅子をずらして換気扇の下まで移動し、煙草を喫うのが習慣になっています。皿とコップを洗い、ラックに新聞をしまうと、見計らったように、ようやく妻が起き出してきます。

特にこれといった予定のない日には、そのまま台所に居座って、私は本を読みます。今日はまさしくそんな日で、先日買った 「集英社文庫 ナツイチ 2019」 の中の一冊、奥田英朗の 『真夜中のマーチ』 を読みました。

奥田英朗は、私の大好きな作家さんの一人です。これまでに沢山の作品を読みました。超真面目な巨編があるかと思えば、それとは真逆に、およそありそうもない話を平気で書くような、変幻自在にジャンルを越えて秀逸な、まことに稀有な作家さんであるわけです。

シリアスなクライムノベル、純度高い青春小説、きわめつけのヘンな小説、そして会社員小説の次に刊行されたこの長編は、スラップスティック小説だ。奥田英朗の自由奔放なジャンル横断はとどまるところを知らないのである。(解説より)

※スラップスティックとは - コメディの一種。からだを使ったギャグ。「どたばたギャグ」 とも訳される。チャップリンのそれなどが有名。(wikipedia)


要は、読んで楽しい、”お気楽” な読み物であるということです。

これはとても大事なことだと思います。この手の本が、実は中々にありません。前宣伝ほどには面白くないであるとか、突飛なだけで面白さが持続しないであるとか、話の中身があまりに杜撰で読むに堪えないであるとか、大抵はそんなことであるわけです。

そこで、私は奥田英朗の書いたものを読みます。この人が書いたものなら間違いない、と思うからです。うだるような暑さが続くこんな日は、大したことは考えず、涼しい部屋で寝転んで、ハラハラドキドキ、時に腹を抱えてバカ笑いするような、こんな本を読んで過ごすに限ります。どこかへ行こうなどとは思いもしません。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆奥田 英朗
1959年岐阜県岐阜市生まれ。
岐阜県立岐山高等学校卒業。プランナー、コピーライター、構成作家を経て小説家。

作品 「ウランバーナの森」「最悪」「邪魔」「空中ブランコ」「町長選挙」「沈黙の町で」「無理」「噂の女」「ナオミとカナコ」「向田理髪店」他多数

関連記事

『北斗/ある殺人者の回心』(石田衣良)_書評という名の読書感想文

『北斗/ある殺人者の回心』石田 衣良 集英社 2012年10月30日第一刷 著者が一度は書き

記事を読む

『滅私』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文

『滅私』羽田 圭介 新潮文庫 2024年8月1日 発行 「楽って、そんなに楽してなにがしたい

記事を読む

『少女奇譚/あたしたちは無敵』(朝倉かすみ)_朝倉かすみが描く少女の “リアル”

『少女奇譚/あたしたちは無敵』朝倉 かすみ 角川文庫 2019年10月25日初版

記事を読む

『正欲』(朝井リョウ)_書評という名の読書感想文

『正欲』朝井 リョウ 新潮文庫 2023年6月1日発行 第34回柴田錬三郎賞受賞!

記事を読む

『沈黙の町で』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『沈黙の町で』奥田 英朗 朝日新聞出版 2013年2月28日第一刷 川崎市の多摩川河川敷で、

記事を読む

『シュガータイム』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『シュガータイム』小川 洋子 中公文庫 2022年7月30日21刷発行 三週間ほど

記事を読む

『無限の玄/風下の朱』(古谷田奈月)_書評という名の読書感想文

『無限の玄/風下の朱』古谷田 奈月 ちくま文庫 2022年9月10日第1刷 第31

記事を読む

『がん消滅の罠/完全寛解の謎』(岩木一麻)_書評という名の読書感想文

『がん消滅の罠/完全寛解の謎』岩木 一麻 宝島社 2017年1月26日第一刷 日本がんセンターに勤

記事を読む

『最悪』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『最悪』奥田 英朗 講談社 1999年2月18日第一刷 「最悪」の状況にハマってしまう3名の人物

記事を読む

『いつかの人質』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『いつかの人質』芦沢 央 角川文庫 2018年2月25日初版 宮下愛子は幼いころ、ショッピングモー

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『ブラック・ティー』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『ブラック・ティー』山本 文緒 角川文庫 2025年12月25日 改

『羆嵐』(吉村昭)_書評という名の読書感想文

『羆嵐』吉村 昭 新潮文庫 2026年12月20日 62刷発行

『妊娠カレンダー』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『妊娠カレンダー』小川 洋子 文春文庫 2020年12月20日 第2

『カフェーの帰り道』(嶋津輝)_書評という名の読書感想文

『カフェーの帰り道』嶋津 輝 東京創元社 2026年1月23日 4版

『きっと君は泣く』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『きっと君は泣く』山本 文緒 角川文庫 2026年1月25日 改版初

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑