『いつかの人質』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/10 『いつかの人質』(芦沢央), 作家別(あ行), 書評(あ行), 芦沢央

『いつかの人質』芦沢 央 角川文庫 2018年2月25日初版

宮下愛子は幼いころ、ショッピングモールで母親が目を離したわずかなすきに連れ去られる。それは偶発的に起きた事件だったが、両親の元に戻ったきた愛子は失明していた。12年後、彼女は再び何者かによって誘拐される。一体誰が? 何の目的で? 一方、人気漫画家の江間礼遠は突然失踪した妻、優奈の行方を必死に捜していた。優奈は12年前に起きた事件の加害者の娘だった。長い歳月を経て再び起きた、「被害者」と「加害者」の事件。偶然か、それとも二度目の誘拐に優奈は関わっているのか。急展開する圧巻のラスト35 P !   文庫化に当り、単行本から改稿されたシーンも。大注目作家のサスペンス・ミステリー。(KADOKAWA書籍紹介より)

言いたいことの中身はすごくよくわかる。但し、それがリアルに伝わってこないのがとても残念で、読むほどに “イタい” 感じがするのは私だけなのだろうか? 人として、あまりにまっとう(真面目)な人物ばかりなのもどうかと思う。

中で、江間礼遠(えま・れおん)という人物はどうだろう? 思いが強過ぎて、彼は徹頭徹尾、人の気持ちがわからない。それはもう異常なほどの「鈍感」で、妻の優奈を果てしなく追い詰める。それは(憎しみではなく)愛ゆえのことで、なお救われない。

「救われない」というのなら、二度の誘拐に巻き込まれた愛子もそう。愛子の気持ちは、誰もわからない。敢えてわかろうとしない両親は、悪い人ではない。むしろ善人で、善人であろうとすればするほど、それは愛子にとって荷えない「負担」となる。両親には、それがわからない。

※期待したほどの「刺激」がなくて、正直つまらなかった。途中からは「急展開する圧巻のラスト35 P ! 」に懸ける思いで読んではみたのですが・・・・・・・。残念! 

この本を読んでみてください係数 75/100

◆芦沢 央
1984年東京都生まれ。
千葉大学文学部史学科卒業。

作品 「罪の余白」「今だけのあの子」「悪いものが、来ませんように」「許されようとは思いません」他

関連記事

『らんちう』(赤松利市)_書評という名の読書感想文

『らんちう』赤松 利市 双葉社 2018年11月25日第一刷 「犯人はここにいる全員です」 あな

記事を読む

『僕の神様』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『僕の神様』芦沢 央 角川文庫 2024年2月25日 初版発行 あなたは後悔するかもしれない

記事を読む

『ノボさん/小説 正岡子規と夏目漱石』(伊集院静)_書評という名の読書感想文

『ノボさん/小説 正岡子規と夏目漱石』(下巻)伊集院 静 講談社文庫 2016年1月15日第一刷

記事を読む

『宇喜多の捨て嫁』(木下昌輝)_書評という名の読書感想文

『宇喜多の捨て嫁』木下 昌輝 文春文庫 2017年4月10日第一刷 第一話  表題作より 「碁

記事を読む

『とんこつQ&A』(今村夏子)_書評という名の読書感想文

『とんこつQ&A』今村 夏子 講談社 2022年7月19日第1刷 真っ直ぐだから怖

記事を読む

『1R 1分34秒』(町屋良平)_書評という名の読書感想文

『1R 1分34秒』町屋 良平 新潮社 2019年1月30日発行 デビュー戦を初回

記事を読む

『一億円のさようなら』(白石一文)_書評という名の読書感想文

『一億円のさようなら』白石 一文 徳間書店 2018年7月31日初刷 大きな文字で、一億円のさような

記事を読む

『夏目家順路』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『夏目家順路』朝倉 かすみ 文春文庫 2013年4月10日第一刷 いつもだいたい機嫌がよろしい

記事を読む

『おまえじゃなきゃだめなんだ』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『おまえじゃなきゃだめなんだ』角田 光代 文春文庫 2015年1月10日第一刷 新刊の文庫オリジ

記事を読む

『地獄への近道』(逢坂剛)_書評という名の読書感想文

『地獄への近道』逢坂 剛 集英社文庫 2021年5月25日第1刷 お馴染み御茶ノ水

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『おまえレベルの話はしてない』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『おまえレベルの話はしてない』芦沢 央 河出書房新社 2025年9月

『絶縁病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『絶縁病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2025年10月11日 初版第1

『木挽町のあだ討ち』(永井紗耶子)_書評という名の読書感想文

『木挽町のあだ討ち』永井 紗耶子 新潮文庫 2025年10月1日 発

『帰れない探偵』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『帰れない探偵』柴崎 友香 講談社 2025年8月26日 第4刷発行

『野火の夜/木部美智子シリーズ』(望月諒子)_書評という名の読書感想文

『野火の夜/木部美智子シリーズ』望月 諒子 新潮文庫 2025年10

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑