『父からの手紙』(小杉健治)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/09
『父からの手紙』(小杉健治), 作家別(か行), 小杉健治, 書評(た行)
『父からの手紙』小杉 健治 光文社文庫 2018年12月20日35刷
家族を捨て、阿久津伸吉は失踪した。しかし、残された子供、麻美子と伸吾の元には、誕生日ごとに父からの手紙が届いた。十年が経ち、結婚を控えた麻美子を不幸が襲う。婚約者が死体で発見され、弟が容疑者として逮捕されたのだ。姉弟の直面した危機に、隠された父の驚くべき真実が明かされてゆく。完璧なミステリー仕立ての中に、人と人との強い絆を描く感動作! (光文社文庫)
「50万部突破! 」にまんまと騙されました。「あなたはきっと涙が止まらない」 とあり、売れているから大丈夫だろうと、買った自分が情けなくなります。何度もあったのです。読んでその通りだったことなど滅多にありません。
この小説を読む前に、私は吉田修一の 『悪人』 という小説を読んでいました。それもあるのでしょうか、この 『父からの手紙』 という作品がやけに薄っぺらいものに感じてなりません。
登場する人物らはおしなべて凡庸で、誰もが思うであろう心の動きがそのままにストレートに書いてあるのに、そこに何を感じろと? 一々の描写が丹念に過ぎるのを不要に思うのは、私ばかりのことなのでしょうか?
本で読むよりドラマで観た方がいい - そう思うにつけ、改めて小杉健治という作家の来歴を確認すると、なんと、昔テレビでよく見た 「火曜サスペンス劇場」 をあまた手掛けた人ではないですか!?
道理で、大味ながらも内容自体は纏まっており、多くの謎を含んで飽きさせません。但し、感動は得てして書かれた文章ではなくその行間にこそあります。言葉だけでは、そう易々と泣けるものではありません。
この本を読んでみてください係数 75/100
◆小杉 健治
1947年東京都墨田区生まれ。
東京都立葛飾野高等学校を経て、コンピュータ専門学校を卒業後、プログラマーとなり18年間勤務。
作品 「原島弁護士の処置」「絆」「土俵を走る殺意」「残照」「正義を測れ」他多数
関連記事
-
『溺レる』(川上弘美)_書評という名の読書感想文
『溺レる』川上 弘美 文芸春秋 1999年8月10日第一刷 読んだ感想がうまく言葉にできない
-
『金曜のバカ』(越谷オサム)_書評という名の読書感想文
『金曜のバカ』越谷 オサム 角川文庫 2012年11月25日初版 天然女子高生と気弱なストーカーが
-
『はぶらし』(近藤史恵)_書評という名の読書感想文
『はぶらし』近藤 史恵 幻冬舎文庫 2014年10月10日初版 脚本家として順調に生活する鈴音(3
-
『薄闇シルエット』(角田光代)_書評という名の読書感想文
『薄闇シルエット』角田 光代 角川文庫 2009年6月25日初版 「結婚してやる。ちゃんとしてやん
-
『203号室』(加門七海)_書評という名の読書感想文
『203号室』加門 七海 光文社文庫 2004年9月20日初版 「ここには、何かがいる・・・・・・
-
『三度目の恋』(川上弘美)_書評という名の読書感想文
『三度目の恋』川上 弘美 中公文庫 2023年9月25日 初版発行 そんなにも、彼が好きなの
-
『ドクター・デスの遺産』(中山七里)_書評という名の読書感想文
『ドクター・デスの遺産』中山 七里 角川文庫 2020年5月15日4版発行 警視庁
-
『眺望絶佳』(中島京子)_書評という名の読書感想文
『眺望絶佳』中島 京子 角川文庫 2015年1月25日初版 藤野可織が書いている解説に、とて
-
『正しい女たち』(千早茜)_書評という名の読書感想文
『正しい女たち』千早 茜 文春文庫 2021年5月10日第1刷 どんなに揉めても、
-
『罪の轍』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文
『罪の轍』奥田 英朗 新潮社 2019年8月20日発行 奥田英朗の新刊 『罪の轍』