『物語のおわり』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

『物語のおわり』湊 かなえ 朝日文庫 2018年1月30日第一刷


物語のおわり (朝日文庫)

妊娠三ヶ月で癌が発覚した女性、父親の死を契機にプロカメラマンになる夢をあきらめようとする男性・・・・・・・ 様々な人生の岐路に立たされた人々が北海道へひとり旅をするなかで受け取るのはひとつの紙の束。それは、「空の彼方」という結末の書かれていない物語だった。
山間の田舎町にあるパン屋の娘、絵美は、学生時代から小説を書くのが好きで周りからも実力を認められていた。ある時、客としてきていた青年と出会い、婚約することになるのだが、憧れていた作家の元で修業をしないかと誘いを受ける。婚約を破棄して東京へ行くか、それとも作家の夢をあきらめるのか・・・・・・・ ここで途切れている「空の彼方」という物語を受け取った人々は、その結末に思いを巡らせ、自分の人生の決断へと一歩踏み出す。湊かなえが描く、人生の苦悩と救い - 。(朝日文庫付録/応援ペーパーより)

相変わらず売れているらしい。が、意外や意外、読むとこれまでの湊作品ではないのがわかります。慈愛に満ちた展開と、北の大地が織りなすあまたの景色が相まって、違う世界が広がっています。

小樽、美瑛、旭川、摩周湖、洞爺湖、札幌・・・・・・・ 将来に不安や迷いを抱えた幾人もの主人公たちは、それぞれの理由を元に、北の大地・北海道へと旅に出ます。

智子は妊娠三ヶ月で癌が発覚し、子どもをあきらめ、手術するか否かで悩んでいます。

拓真は実家のかまぼこ工場を継ぐことを迫られ、プロカメラマンになる夢をあきらめようとしています。

綾子は、志望したテレビ番組の制作会社に内定が決まったものの、自分には才能がないと自信が持てずに悩んでいます。

夢に向かってアメリカ行きを切望する娘に対し、木水はそれに反対しています。

あかねは愛する人と訣別し、仕事一筋に証券会社で働いてきたのでした。

旅先で偶然知り合い、拓真は智子から、綾子は拓真からと、二十枚ほどの紙の束を預けられます。それは、A4を横長に使ったコピー用紙に綴られた「空の彼方」という結末のない物語 -

託された者たちは、短く、終わりのない物語の続きに、知らず知らずのうちに自分の行く末を重ね合わせてみたりします。物語の主人公・絵美の人生に自分を重ね、彼女の運命に自分の将来を重ね合わせて、ありたいと願う自分の未来を描いてみたりします。

景色の変化とともに、誰のものかはわからない終わりのない物語がまるで知らない人と人とを繋いでゆきます。

 

この本を読んでみてください係数  80/100


物語のおわり (朝日文庫)

◆湊 かなえ
1973年広島県因島市中庄町(現・尾道市因島中庄町)生まれ。
武庫川女子大学家政学部卒業。

作品 「告白」「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「望郷」「豆の上で眠る」「境遇」「往復書簡」「サファイア」「母性」「絶唱」「リバース」「ユートピア」他多数

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