『JK』(松岡圭祐)_書評という名の読書感想文

『JK』松岡 圭祐 角川文庫 2022年5月25日初版

読書メーター(文庫部門/週間) 2022/3/30~4/5 読みたい本ランキング 第1位

逗子の山中で発見された一家3人の焼死体。川崎にある懸野高校の1年生・有坂紗奈が両親と共に惨殺された。犯人は紗奈と同じ学校の同級生や上級生からなる不良グループであることが公然の事実とされたが、警察は決定的な証拠をあげることができず、彼らの悪行が止まることはなかった。しかし、1人の少女、高校1年生の江崎瑛里華が現れて事態は急展開をとげる。人気シリーズ 「高校事変」 を超える、青春バイオレンス文学! (角川文庫)

冒頭 - 極めて残虐、極めて非道な場面が続きます。情け容赦ない暴力と、果てしなく続く凌辱は、今後起こるであろう (物語の) 展開を、あれこれ予想しながらでも読んでください。でないと、気分が萎えて、読む気をなくすかもしれません。それほどに状況は苛烈かつ残忍です。

解説 - 新たなる武闘派ヒロインの誕生  村上 貴史

神奈川県川崎市の懸野高校。
そこには、人々に慕われる一年生の女子がいた。
有坂紗奈。
ダンスサークルの中心的存在であり、吹奏楽部ではフルートで聴く者を魅了する。アルバイト先の介護施設でも、掛け持ちしているコンビニエンスストアでも人気者だ。彼女はさらに、校内で不良に絡まれている同学年の生徒にも救いの手を伸ばす強さを備えている。その一方で紗奈は、実は、鬱病の母を抱えていた。バイトの掛け持ちも家計を助けるためなのだが、彼女は苦労を一切見せず、高校生活を送っていた。

そんな紗奈と両親を、同じ学校の同級生や上級生たちが襲った。高校生とはいえ、川崎のヤクザの配下にある凶悪な連中が、暴虐の限りを尽くしたのだ。笹舘麴をリーダーとする彼等は紗奈の父親を笑いながら殺し、さらに母親を殺すと脅して紗奈を繰り返し凌辱した。男子高校生たちはその後、母親も殺したうえで、ヤクザに後始末を依頼する。両親の死体と、瀕死ながらもまだ息のあった紗奈を、事件が発覚しないように処分して欲しいと頼んだのだ。依頼を受けたヤクザは、死体の処理屋を使って、三人まとめて逗子の山中で焼いてしまうことにする・・・・・・・。

とことん強烈な導入部である。著者は一切の容赦なしに高校一年生の紗奈を痛めつける。それだけでも十分にインパクトが強いのだが、残虐な行為を重ねるのが、紗奈と同世代の男子高校生たちであることも、絶望感をつのらせる。正直言ってこのシーンを読むと、心は負の感情に囚われてしまう。だが、同時に思うのだ、この物語は、ここからどう進むのだろうか、と。(以下略)

※ここから先が本番です。で、ここから先は書きません。尚、「JK」 は女子高生を意味しているわけではありません。何を意味しているかは本書の序盤で語られています。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆松岡 圭祐
1968年愛知県生まれ。

作品 デビュー作 「睡眠」 がミリオンセラーに。「千里眼」シリーズ、「万能鑑定士Q」シリーズ、「ミッキーマウスの憂鬱」「黄砂の籠城」「高校事変」シリーズ他多数

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