『ポイズンドーター・ホーリーマザー』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

『ポイズンドーター・ホーリーマザー』湊 かなえ 光文社文庫 2018年8月20日第一刷

女優の弓香の元に、かつての同級生・理穂から届いた故郷での同窓会の誘い。欠席を表明したのは、今も変わらず抑圧的な母親に会いたくなかったからだ。だが、理穂とメールで連絡を取るうちに思いがけぬ訃報を聞き・・・・・・・。(「ポイズンドーター」) 母と娘、姉と妹、友だち、男と女。善意と正しさの掛け違いが、眼前の光景を鮮やかに反転させる。名手のエッセンスが全編に満ちた極上の傑作集。(光文社文庫)

田舎でくすぶる「マイディアレスト」の淑子は、母親や妹から理不尽な扱いを受けながらも、誰に迷惑かけることもなく静かに暮らす慎ましい女性だし、ライバルの失脚を願う「ベストフレンド」の涼香だって、嫉妬に苦しみながらも脚本家になる夢をひたすら追い続ける努力家だ。「優しい人」の明日実は、母親からの刷り込みによって対人関係で貧乏くじを引き続けているし、「罪深き女」の幸奈は母親の厳しい監視に堪えながら、孤独な少年に心を寄せることに唯一のアイデンティティを見いだしている。

みな欠落した部分を抱え、傷を負いながらも懸命に生きる女性達だ。そんな彼女たちに降りかかる出来事とその結末は、いずれも苛烈だ。清く正しく生きても幸せな人生を送れるわけではない現実。善意という名の凶器でメッタ打ちにされる恐怖、笑顔の裏でじわじわと蓄積された負の感情がコップから溢れ出る瞬間。(解説より抜粋/by清水友佳子)

よくよく考えればすぐにわかるのだが、人間関係において真に自分が気に掛ける人というのは実はさほど多くはない、ということだ。親兄弟(姉妹)、多くはない数の友人、恋人など・・・・・・・、普通ならせいぜいがそれくらいのものだろう。

そして、それらの人々に対してさえ、大抵は相手のことを「甘んじて」受け入れている。突き詰めれば相反することを、(わかっていながら)敢えて見過ごしている。大事に思うがゆえに、我慢しているのだ。

ところが、ひとたび関係が拗れると、事は大いにややこしくなる。 とりわけ “母と娘” はややこしい - ここでは、主にそれが書いてあります。

世の中は、全体の1パーセントにも満たない優しい人の我慢と犠牲の上において、かろうじて成り立っているのだと思います。そして、これだけは断言できます。
あなたは優しい人じゃない - 。でも、それは決して悪いことじゃない。(「優しい人」より)

幼い頃から絶えず言い聞かされてきた “躾” という名の強要。日常に巣くう、それぞれの思いの掛け違い - 。何を思い、何を考え、母は母として生きてきたのか? なぜ今も私を束縛するのか? ・・・・・・・

私はその -  あなたの「正しさ」を憎みます。

この本を読んでみてください係数  85/100

◆湊 かなえ
1973年広島県因島市中庄町(現・尾道市因島中庄町)生まれ。
武庫川女子大学家政学部卒業。

作品 「告白」「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「望郷」「豆の上で眠る」「境遇」「往復書簡」「母性」「絶唱」「リバース」「物語のおわり」「ユートピア」他多数

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