『残像』(伊岡瞬)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/05 『残像』(伊岡瞬), 伊岡瞬, 作家別(あ行), 書評(さ行)

『残像』伊岡 瞬 角川文庫 2023年9月25日 初版発行

訪れたアパートの住人は、全員元犯罪者だった。騙し合いに息をのむ著者渾身のサスペンス! 角川文庫75周年記念、文庫書下ろし!

浪人生の堀部一平は、バイト先で倒れた葛城に付き添い、自宅アパートを訪れた。そこでは、晴子、夏樹、多恵という年代もバラバラな女性3人と小学生の冬馬が、共同生活を送っていた。他人同士の生活を奇妙に感じた一平は冬馬から、女性3人ともに前科があると聞く。一方、政治家の息子・吉井恭一は、執拗に送られてくる、過去を断罪する写真に苦悩していた。身を寄せ合う晴子たちの目的、そして水面下で蠢く企ての行方は - 。暗い過去への復讐を描いた、心震わす衝撃のサスペンスミステリ!

「信頼、裏切り、後悔、敬愛、憎悪、憧れ、友情、希望。そんなあれこれをぎっしり詰め込みました」- 伊岡瞬 (「KADOKAWA」 公式レーベルサイトより)

今最も世間の注目を集めているニュースといえば、大手芸能プロダクション・ジャニーズ事務所の元社長、故ジャニー喜多川氏が関わったとされる、事務所所属の多くの未成年男子に対する性加害問題でしょう。被害を受けた人の数は、なんと478人 (10/2時点) にも上ります。(この数はまだまだ増えていくようです)

その数たるや。その罪深さたるや。被害に遭った少年一人一人の心を思うと、(かける) 言葉がありません。やがて消える疵ならまだしも、おそらく生涯苛み続けるであろう心の疵を、どう癒すことができるのでしょう。この先何がなされれば、報われるのでしょう。

物語には、ジャニーズ問題の当事者たちに似た人物が複数人登場します。被害者だけではありません。少年だけでもありません。「もしかするとそうではないか」 と薄々感じながらも、見て見ぬふりを通す大人たちも登場します。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆伊岡 瞬

1960年東京都武蔵野市生まれ。日本大学法学部卒業。

作品 「いつか、虹の向こうへ」「代償」「もしも俺たちが天使なら」「痣」「本性」「冷たい檻」他多数

関連記事

『愛すること、理解すること、愛されること』(李龍徳)_書評という名の読書感想文

『愛すること、理解すること、愛されること』李 龍徳 河出書房新社 2018年8月30日初版 謎の死

記事を読む

『白磁の薔薇』(あさのあつこ)_書評という名の読書感想文

『白磁の薔薇』あさの あつこ 角川文庫 2021年2月25日初版 富裕層の入居者に

記事を読む

『ほかに誰がいる』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『ほかに誰がいる』朝倉 かすみ 幻冬舎文庫 2011年7月25日5版 あのひとのこと

記事を読む

『赤へ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『赤へ』井上 荒野 祥伝社 2016年6月20日初版 ふいに思い知る。すぐそこにあることに。時に静

記事を読む

『百舌の叫ぶ夜』(逢坂剛)_書評という名の読書感想文

『百舌の叫ぶ夜』 逢坂 剛 集英社 1986年2月25日第一刷 「百舌シリーズ」第一作。(テレビ

記事を読む

『ひりつく夜の音』(小野寺史宜)_書評という名の読書感想文

『ひりつく夜の音』小野寺 史宜 新潮文庫 2019年10月1日発行 大人の男はなかな

記事を読む

『恋に焦がれて吉田の上京』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『恋に焦がれて吉田の上京』朝倉 かすみ 新潮文庫 2015年10月1日発行 札幌に住む吉田苑美

記事を読む

『おもかげ』(浅田次郎)_書評という名の読書感想文

『おもかげ』浅田 次郎 講談社文庫 2021年2月17日第4刷発行 孤独の中で育ち

記事を読む

『それまでの明日』(原尞尞)_書評という名の読書感想文

『それまでの明日』原 尞 早川書房 2018年3月15日発行 11月初旬のある日、渡辺探偵事務所の

記事を読む

『Mの女』(浦賀和宏)_書評という名の読書感想文

『Mの女』浦賀 和宏 幻冬舎文庫 2017年10月10日初版 ミステリ作家の冴子は、友人・亜美から

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『執着者』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『執着者』櫛木 理宇 創元推理文庫 2024年1月12日 初版 

『オーブランの少女』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『オーブランの少女』深緑 野分 創元推理文庫 2019年6月21日

『揺籠のアディポクル』(市川憂人)_書評という名の読書感想文

『揺籠のアディポクル』市川 憂人 講談社文庫 2024年3月15日

『海神 (わだつみ)』(染井為人)_書評という名の読書感想文

『海神 (わだつみ)』染井 為人 光文社文庫 2024年2月20日

『百年と一日』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『百年と一日』柴崎 友香 ちくま文庫 2024年3月10日 第1刷発

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑