『おるすばん』(最東対地)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/09
『おるすばん』(最東対地), 作家別(さ行), 書評(あ行), 最東対地
『おるすばん』最東 対地 角川ホラー文庫 2019年9月25日初版
絶対にドアを開けてはいけない・・・・・・・ あいつがやって来る、来るぞ、来るぞ、来るぞ、来るぞ!
「ドロボー」 は律儀に呼び鈴を押して訪ねてくる。ドアを開けたら最後、身体の一部をもぎ取られてしまうらしい - 。奇怪な都市伝説を聞いた祐子は、幼い姪が最近怯えている、左腕がない 「キムラサン」 との符号に戦慄する。オカルト雑誌の編集者とともに調査に乗り出した祐子は、封印していた自身の記憶が蠢きだすのを感じる・・・・・・・。底なしの憎悪に読む者を引きずり込む、理不尽かつ容赦ないノンストップ・サスペンス・ホラー! (角川ホラー文庫)
ドロボー (滝沢は 「キムラサン」 と呼称していた) は、ひとりで家にいる時にやってくる。キムラサンは道に迷うので印をしておかなければならない。それがシールで、それを目掛けてやってくる。シールは決まって赤い。血の色を込めた赤色である。
ドロボーがやってくる家の選定の条件は、その家に人形 (ぬいぐるみやフィギア、プラモデルなど四肢に頭がついていれば条件にあてはまる) があること。そして、それに本来の名前と違う名前を付けていること。
人形會が演じた劇の内容を思いだし、慄いた。ドロボーのはじまりは間違いなく、クサノミが自らの死と憎悪で行使した呪術だ。100年以上の昔から、あれは意思を持たず、人形會が選んだ家を渡り歩いていたのだ。
腕か、脚。四肢を一本ずつ集めて最後に頭を載せる。すると、何が完成するのか・・・・・・・? 形ばかりの、ひとりの人間ができる。
[目次]
どろぼう
一 キムラサン
二 セタ/ケス
三 ウジ
四 イタズ
五 シガネ
六 サンペ
終
序
この本を読んでみてください係数 80/100
◆最東 対地
1980年大阪府交野市生まれ。大阪府在住。
作品 「夜葬」「♯拡散忌望」「えじきしょんを呼んではいけない」「怨霊診断」等
関連記事
-
『往復書簡』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文
『往復書簡』湊 かなえ 幻冬舎文庫 2012年8月5日初版 高校教師の敦史は、小学校時代の恩師の依
-
『ウィメンズマラソン』(坂井希久子)_書評という名の読書感想文
『ウィメンズマラソン』坂井 希久子 ハルキ文庫 2016年2月18日第一刷 岸峰子、30歳。シ
-
『生きてるだけで、愛。』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文
『生きてるだけで、愛。』本谷 有希子 新潮文庫 2009年3月1日発行 あたしってなんでこんな
-
『麦本三歩の好きなもの 第一集』(住野よる)_書評という名の読書感想文
『麦本三歩の好きなもの 第一集』住野 よる 幻冬舎文庫 2021年1月15日初版
-
『悪果』(黒川博行)_書評という名の読書感想文
『悪果』黒川 博行 角川書店 2007年9月30日初版 大阪府警今里署のマル暴担当刑事・堀内は
-
『あたしたち、海へ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文
『あたしたち、海へ』井上 荒野 新潮文庫 2022年6月1日発行 親友同士が引き裂
-
『異類婚姻譚』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文
『異類婚姻譚』本谷 有希子 講談社 2016年1月20日初版 子供もなく職にも就かず、安楽な結
-
『ここは私たちのいない場所』(白石一文)_あいつが死んで5時間後の世界
『ここは私たちのいない場所』白石 一文 新潮文庫 2019年9月1日発行 順風満帆
-
『海』(小川洋子)_書評という名の読書感想文
『海』小川 洋子 新潮文庫 2018年7月20日7刷 恋人の家を訪ねた青年が、海か
-
『愛のようだ』(長嶋有)_そうだ! それが愛なんだ。
『愛のようだ』長嶋 有 中公文庫 2020年3月25日初版 40歳にして免許を取得