『ハーメルンの誘拐魔』(中山七里)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2023/09/11
『ハーメルンの誘拐魔』(中山七里), 中山七里, 作家別(な行), 書評(は行)
『ハーメルンの誘拐魔』中山 七里 角川文庫 2022年2月25日11版
刑事犬養隼人シリーズ累計45万部突破!! 100%面白い 王道警察ミステリ
どんでん返しの帝王・中山七里が医療と法の闇に切り込む!記憶障害を患った15歳の少女、月島香苗が街中で忽然と姿を消した。現場には 「ハーメルンの笛吹き男」 の絵葉書が残されていた。その後少女を狙った誘拐事件が連続して発生、被害者は、子宮頸がんワクチンの副反応による障害を負った者と、ワクチン推進派の医師の娘だった。そんな中 「笛吹き男」 から、計70億円の身代金の要求が警察に届く。少女の命と警察の威信を懸け、孤高の刑事が辿り着いた真実とは - 。人気シリーズ第3弾! (角川文庫)
子宮頸がんは年間約1万人が罹患し、約2,800人が死亡しており、患者数・死亡者数とも近年漸増傾向にあります。特に、他の年齢層に比較して50歳未満の若い世代での罹患の増加が問題となっています。
多くの若い女性が子宮頸がんワクチンの恩恵を受けています。それは確かなことで、その事実を否定するものではありません。
問題は、中に、ワクチンの副反応によって著しい障害を負い、本来享受すべき若々しく輝かしい日々を根こそぎ台無しにされてしまった少女たちがいることでした。そして更に最悪なのは、その事実を、事実と認めようとしなかった連中がいたことです。
子宮頸がんワクチンは、2009年12月~2014年11月に推計338万人 (約890万回) が接種を受け、2,584人 (0.08%) の副作用報告が寄せられている。国は2013年6月から接種の呼び掛けを中止しているが、どういった場合に症状が出るのかは分っていない。(太字部分は 「日本産婦人科学会」 及 「保健指導リソースガイド」 より)
勿論のこと、主導したのは - 国でした。予防接種が爆発的に普及したきっかけは、厚労省の肩入れでした。
厚労省は平成22年度からワクチン接種緊急促進事業を実施し、子宮頸がんワクチンを含む対象ワクチンの接種事業に助成金を支給したのだ。
この助成金つき接種事業に各市町村が飛びついた。接種の対象者である小学6年生から高校1年生に相当する女子は無料もしくは低額で接種が受けられるようになったのだ。平成25年4月からは予防接種に基づく定期接種として続けられている。(本文より)
7人の少女を誘拐した人物は、自分を 〈ハーメルンの笛吹き男〉 と名乗ります。
最初の被害者は新宿区矢来町に住む月島綾子の長女・香苗、15歳でした。場所は新宿区神楽坂。母親が目を離した隙に姿を消したのでした。香苗は記憶障害で、徐々に病状が進行し、現在は、母の綾子を母と認識できないまでに悪化しています。症状が現れたのは、子宮頸がんワクチンの予防接種を受けてから5ヶ月後のことでした。
※子宮頸がんワクチンの一連の取り扱いについて、今回は珍しく、著者の (いつにない) 強い憤りが透けて見えるようです。読めば、誰もが、胸の詰まる思いがします。とても他人事とは思えません。
この本を読んでみてください係数 85/100
◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。
作品 「切り裂きジャックの告白」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「闘う君の唄を」「嗤う淑女」「魔女は甦る」「連続殺人鬼カエル男」「護られなかった者たちへ」他多数
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