『強欲な羊』(美輪和音)_書評という名の読書感想文

『強欲な羊』美輪 和音 創元推理文庫 2020年4月17日7刷

第7回ミステリーズ! 新人賞受賞作 圧倒的イヤミス体験 私って少しだけ欲張りかしら・・・・・・・?

美しい姉妹が暮らすとある屋敷にやってきた 「わたくし」 が見たのは、対照的な性格の二人の間に起きた陰湿で邪悪な事件の数々。年々エスカレートし、ついには妹が姉を殺害してしまうが - 。その物語を滔々と語る 「わたくし」 の驚きの真意とは? 圧倒的な筆力で第7回ミステリーズ! 新人賞を受賞した 「強欲な羊」 に始まる “羊” たちの饗宴。企みと悪意に満ちた、五編収録の連作集。(創元推理文庫)

【目次】
強欲な羊
背徳の羊
眠れぬ夜の羊
ストックホルムの羊
生贄の羊

「強欲な羊」 は、とある屋敷で暮らす美しき姉妹のもとにやってきた 「わたくし」 の独白形式で語られていきます。気性が激しく独占欲が強い麻耶子と可憐で儚げな心優しい沙那子。二人が暮らす屋敷の中で起こる陰惨で邪悪な事件の数々。不穏な空気を予感させる冒頭に徐々に不協和音を被せていく、粘り着いたような筆致に引き込まれて、気がつけば息を止めながら文字を追ってしまいます。誰が羊で誰が狼なのか。読んでいくとなんとなく分かりそうなものですが、それが大いなる油断であったことを読後思い知ることになるでしょう。

本作はホラーというよりイヤミスの色合いが濃いと思われます。イヤミスとは 「読んだら嫌な気分になれる後味の悪いミステリ」 のことで近年活況といえるジャンルです。有名なところでは 『告白』(湊かなえ)、『ユリゴコロ』(沼田まほかる)、『殺人鬼フジコの衝動』(真梨幸子) などがそうでしょう。(後略)

しかし嫌な気分になって終わりでは優れたイヤミスとはいえません。やはり前述した作品はいずれも秀逸な謎解きやサプライズが盛り込まれています。もちろん我らが強欲な羊 も例外ではありません。イヤミスでは登場人物の狂気や愛憎、殺意といったダークサイドが、舐めてかかった読者に手痛いしっぺ返しを食らわせる伏線や小道具になります。

特に本作は登場人物の台詞や行動を注意深く読んでいくことをおすすめします。そして安易に信じたり決めつけたりしないことです。文中に仕込まれたトラップに気づいても油断は禁物です。そのトラップを避けた先に思いも寄らない別のトラップが仕掛けられているかもしれません。(七尾与史/解説より)

※これと “空気” がよく似た作品を、昔どこかで読んだことがあるような。(私には、ということですが) 少し懐かしい感じがします。

平均的な文庫と比べると、行間が狭く、文字はやや小さめで、ページ毎に文字がぎっしり詰まっています。読むのにちょっと苦労するかもしれません。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆美輪 和音
1966年東京都生まれ。
青山学院大学文学部卒業。

作品 大良美波子名義でテレビドラマ 「美少女H」 や、映画 「着信アリ」 などの脚本を手がける。2010年 「強欲な羊」 で第7回ミステリーズ! 新人賞を受賞し、小説家デビュー。

関連記事

『愚者の毒』(宇佐美まこと)_書評という名の読書感想文

『愚者の毒』宇佐美 まこと 祥伝社文庫 2017年9月10日第4刷 愚者の毒 (祥伝社文庫)

記事を読む

『コクーン』(葉真中顕)_書評という名の読書感想文

『コクーン』葉真中 顕 光文社文庫 2019年4月20日初版 コクーン (光文社文庫)

記事を読む

『グロテスク』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文

『グロテスク』桐野 夏生 文芸春秋 2003年6月30日第一刷 グロテスク  

記事を読む

『エレジーは流れない』(三浦しをん)_書評という名の読書感想文

『エレジーは流れない』三浦 しをん 双葉社 2021年4月25日第1刷 エレジーは流れない

記事を読む

『太陽のパスタ、豆のスープ』(宮下奈都)_書評という名の読書感想文

『太陽のパスタ、豆のスープ』宮下 奈都 集英社文庫 2013年1月25日第一刷 太陽のパスタ、

記事を読む

『犯人は僕だけが知っている』(松村涼哉)_書評という名の読書感想文

『犯人は僕だけが知っている』松村 涼哉 メディアワークス文庫 2021年12月25日初版

記事を読む

『貞子』(牧野修)_書評という名の読書感想文

『貞子』牧野 修 角川ホラー文庫 2019年4月29日初版 貞子 (角川ホラー文庫)

記事を読む

『孤独論/逃げよ、生きよ』(田中慎弥)_書評という名の読書感想文

『孤独論/逃げよ、生きよ』田中 慎弥 徳間書店 2017年2月28日初版 孤独論 逃げよ、生き

記事を読む

『枯れ蔵』(永井するみ)_書評という名の読書感想文

『枯れ蔵』永井 するみ 新潮社 1997年1月20日発行 枯れ蔵 (新潮ミステリー倶楽部)

記事を読む

『恋する寄生虫』(三秋縋)_書評という名の読書感想文

『恋する寄生虫』三秋 縋 メディアワークス文庫 2021年10月25日27版発行 恋する寄生

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『プリズム』(貫井徳郎)_書評という名の読書感想文

『プリズム』貫井 徳郎 実業之日本社文庫 2022年8月9日初版第2

『自転しながら公転する』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『自転しながら公転する』山本 文緒 新潮文庫 2022年11月1日発

『呪い人形』(望月諒子)_書評という名の読書感想文

『呪い人形』望月 諒子 集英社文庫 2022年12月25日第1刷

『騒がしい楽園』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『騒がしい楽園』中山 七里 朝日文庫 2022年12月30日第1刷発

『モナドの領域』(筒井康隆)_書評という名の読書感想文

『モナドの領域』筒井 康隆 新潮文庫 2023年1月1日発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑