『るんびにの子供』(宇佐美まこと)_書評という名の読書感想文

『るんびにの子供』宇佐美 まこと 角川ホラー文庫 2020年8月25日初版

近づくのを禁止された池で、4人の園児たちは水から上がってくる少女を茫然と見つめていた。後にその女の子を園でも見かけるようになり・・・・・・・(「るんびにの子供」)。ヒモ生活を追い出され悪事の果て古家に辿り着いた男は老夫婦の孫だと騙り同居し始めるが -(「柘榴の家」)。犬の散歩中に見かけた右手の手袋が日に日に自宅に近づいてきていることに気づいた姉は -(「手袋」)。第1回怪談文学賞短編部門大賞受賞作を含む珠玉の怪談集。(角川ホラー文庫)

[収録作品]
・るんびにの子供 (第1回 『幽』 怪談文学賞 〈短編部門〉 大賞受賞作/デビュー作)
・柘榴の家
・手袋
・キリコ
・とびだす絵本
・獺祭
・狼魄
(ラン・ポオー) ※文庫のための書き下ろし

単に怪談話、ホラーというのではなく、上質な手触りがする、人の情念についての譬え話を読まされているような。そんな感じがします。しかも粒ぞろいの。

怖さや残酷さよりまず先にくるのは、内に秘めたやり切れなさと、どこか憐れみに似た感情です。震えがくるのはそのあとです。

池の水面にすくっと立つように浮かぶ少女。その子はまっすぐに空中に浮かび上がろうとしています。- 「お母さんにも見えるんですね。あの子が

老いた夫の介護に精を出す老婆の家の門の内側には、大きな柘榴の木がありました。
史子が路で拾った黒い手袋。但し、落ちていたのは右手だけでした。

キリコは何も言わないし、何もしません。
とびだす絵本と獺祭は、何より、哀しい余韻に満ちています。
狼魄は、巡り巡って優佳のもとに届きます。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆宇佐美 まこと
1957年愛媛県松山市生まれ。
松山商科大学人文学部卒業。

作品 「愚者の毒」「虹色の童話」「入らずの森」「角の生えた帽子」「死はすぐそこの影の中」「熟れた月」「ボニン浄土」他

関連記事

『間宵の母』(歌野晶午)_書評という名の読書感想文

『間宵の母』歌野 晶午 双葉文庫 2022年9月11日第1刷発行 恐怖のあまり笑い

記事を読む

『夏目家順路』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『夏目家順路』朝倉 かすみ 文春文庫 2013年4月10日第一刷 いつもだいたい機嫌がよろしい

記事を読む

『海の見える理髪店』(荻原浩)_書評という名の読書感想文

『海の見える理髪店』荻原 浩 集英社文庫 2019年5月25日第1刷 第155回直木

記事を読む

『バック・ステージ』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『バック・ステージ』芦沢 央 角川文庫 2019年9月25日初版 「まさか、こうき

記事を読む

『阿蘭陀西鶴』(朝井まかて)_書評という名の読書感想文

『阿蘭陀西鶴』朝井 まかて 講談社文庫 2016年11月15日第一刷 江戸時代を代表する作家・井原

記事を読む

『平場の月』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『平場の月』朝倉 かすみ 光文社 2018年12月20日初版 五十歳の再会 『平

記事を読む

『密やかな結晶 新装版』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『密やかな結晶 新装版』小川 洋子 講談社文庫 2020年12月15日第1刷 記憶

記事を読む

『ぼくがきみを殺すまで』(あさのあつこ)_書評という名の読書感想文

『ぼくがきみを殺すまで』あさの あつこ 朝日文庫 2021年3月30日第1刷 ベル

記事を読む

『死体でも愛してる』(大石圭)_書評という名の読書感想文

『死体でも愛してる』大石 圭 角川ホラー文庫 2020年8月25日初版 台所に立っ

記事を読む

『悪いものが、来ませんように』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『悪いものが、来ませんように』芦沢 央 角川文庫 2016年8月25日発行 大志の平らな胸に、紗

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『曾根崎心中/新装版』(角田光代 原作 近松門左衛門)_書評という名の読書感想文

『曾根崎心中/新装版』角田 光代 原作 近松門左衛門 リトルモア 2

『枯木灘』(中上健次)_書評という名の読書感想文

『枯木灘』中上 健次 河出文庫 2019年10月30日 新装新版3刷

『僕の女を探しているんだ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『僕の女を探しているんだ』井上 荒野 新潮文庫 2026年1月1日

『この本を盗む者は』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『この本を盗む者は』深緑 野分 角川文庫 2025年11月5日 8版

『いつも彼らはどこかに』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『いつも彼らはどこかに』小川 洋子 新潮文庫 2025年11月25日

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑