『海神 (わだつみ)』(染井為人)_書評という名の読書感想文
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『海神 (わだつみ)』(染井為人), 作家別(さ行), 書評(わ行), 染井為人
『海神 (わだつみ)』染井 為人 光文社文庫 2024年2月20日 初版1刷発行
『悪い夏』 『正体』 で大ブレイク中の著者が、目を背けたくなるような悪と復興への希望を描く。骨太の社会派ミステリー!

災害は金になる - 東日本大震災で被災した島に現れた救世主。そう信じられていた男が巨額の復興支援金を横領していた!? 復興に向けて歩み出した島は、ふたたび混乱の渦に巻き込まれて・・・・・・・。
東日本大震災で被災した三陸沖の天ノ島に現れた復興支援のプロ・遠田政吉。行政の支援も届かない地獄で救助、遺体捜索などに奔走し、救世主として信望を得るが、のちに復興支援金の横領疑惑が発覚する。島出身の新聞記者・菊池一朗が疑惑の解明のため遠田の過去を探り始めると、そこにはおぞましい闇が - 。エンタメ界最注目の著者が放つ骨太の社会派ミステリー! (光文社文庫)
三陸沖に浮かぶ天ノ島には約3500人が暮らしています。2011年3月、東日本大震災で大きな被害を受け、孤立無援の中、島はNPO法人ウォーターヒューマンの支援を受けることに。
その代表・遠田政吉は被災者の救助、海底に沈んだ遺体の捜索などで 「神様みたいな人」 と称賛されたのですが、やがて復興支援金の横領疑惑が発覚します。支援金12億円のうち、4億2000万円が消え、遠田に雇われていた天ノ島復興支援隊の従業員が突然、解雇されたのでした。
復興へ向けて歩み出した途端、またも島は混乱を極めます。皆が救世主と信じた遠田の正体は、実は被災した島と島民を食い物にする、非道極まりない “火事場泥棒“ だったのでした。「混乱に乗じて、被災地における詐欺に横領、窃盗に性暴力など、人ならざる行為を働く者たち (P523)」 - それが遠田の正体でした。
企みは、遠からず破綻を招くことになります。しかし、物語の核心はそこではありません。
図らずも、遠田の計画に加担してしまった人物がいます。遠田が出す指示に、従う以外他になすすべがなかった者たちも。結果、彼らを含む多くの島民の、遠田は、いずれ迎えるはずの未来までをも奪い去ったのでした。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆染井 為人
1983年千葉県生まれ。
作品 「悪い夏」「正体」「正義の申し子」「震える天秤」「鎮魂」「滅茶苦茶」「黒い糸」など
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