『絶縁病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『絶縁病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2025年10月11日 初版第1刷発行

切るべきなのは、病巣でなく人間関係! 累計32万部病棟シリーズ最新刊

隣人、親きょうだい、義両親・・・ “あの人が原因で体調が悪いあなたへの処方箋

神田川病院の桐ヶ谷キワミ医師は三回の離婚で人生を考え直し、趣味を謳歌しながらアルバイトとして働いている。 
ある日、外来を訪れた七十代の患者・熊野佐奈枝は、女性医師が担当でないと嫌だと言う。「いい歳をして自意識過剰だ」 と鼻で笑う部長に “時代遅れ“ だと反論するキワミ。部長から譲り受けた聴診器を使うと、佐奈枝の体調不良の意外な原因が明らかに・・・・・・・!?
裕福なネイルサロン経営者、夫の両親が建てた家で家事のサポートも受けて暮らす会社員。人から羨まれるような人生を送る女性たちの “見えざる不調“ の理由とは。大反響 「病棟」 シリーズ第四弾。(小学館文庫)

登場する三人の患者のうち、特に最後の江藤静歌のケースが出色で、かつ身につまされました。家族といえども所詮他人は他人。「他人」 と付き合うことほど難しいことはありません。なまじ気遣ったばかりに、ひどい目に遭ったり、逆に恨まれたりすることだってあるのですから。

本書は累計三十二万部を突破している 「病棟」 シリーズの第四弾だ。シリーズには患者の “心の声“ が聞こえる不思議な聴診器が登場するという共通点がある。『後悔病棟』 は空気が読めない早坂ルミ子、『希望病棟』 は死後の世界を信じている黒田摩周湖、『懲役病棟』 は元暴走族で金髪の太田香織。それぞれ聴診器を使う医師が異なり、ストーリーも完結しているため、どれから読んでも楽しめる。

今回、AURORAと刻印のある不思議な聴診器を手にとることになるのは、桐ヶ谷キワミ。前の病院を五十五歳で早期退職し、今は神田川病院でアルバイトの医師として週に三日だけ働いている。

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今回、キワミが関わる患者は三人。みんな女性だ。

一人目は熊野佐奈枝、七十一歳。子供たちは独立していて、夫も亡くなり一人暮らしだ。半年ほど胃痛と吐き気に悩まされ、三つのクリニックを梯子したが治らない。そこで、神田川病院を訪れた。佐奈枝は女性医師の診察を希望する。ところが、女性医師に急患が入ってしまい、男性である笹田部長が診ることになってしまう。(以下略)

二人目の患者は、山口真澄。三十七歳のネイルサロン経営者だ。父を早くに亡くし、母は市場で働きながら苦労して三人の子どもを育てた。きょうだいは常に母の背中を見て、力を合わせて生きてきた。今は末っ子の真澄が起業して成功し、家族を旅行に連れて行けるまでになったのだが、ひどい眩暈に悩まされている。(以下略)

最後の患者は、江藤静歌。二十九歳の会社員だ。一年ほど前に結婚してから、肩こりがひどくなって、整形外科や整体に行っても治らない。仕事は順調だし、家もあるし、経済的な心配もない。十歳上の夫は穏やかで優しい。同じ敷地に住む義理の両親は裕福で気遣いは細やか。貿易会社で翻訳の仕事をしている静歌の代わりに、義母が家事全般を受け持ってくれる。恵まれた環境にいるはずなのに不調が続く。原因をつきとめるため、キワミはAURORAと刻印のある聴診器を使い、静歌の過去を探っていく。ところが、静歌の生活は波風の立たない穏やかなものだった。(以下略/解説より抜粋)

※神田川病院を訪れた三人の女性が訴えたのは、(よくある) 胃痛であったり、眩暈であったり、肩こりでした。ところが、その原因がわかりません。身体は普通に健康で、悪いところは見当たらず、キワミは処方箋一枚書くことができません。

いったい何が問題なのか - そんな時です。キワミが (部長から無理やり押しつけられた)聴診器を患者の胸にあてたのは。はてさて、彼女は患者の 「何を」 聴いたのでしょう。

この本を読んでみてください係数  80/100

◆垣谷 美雨
1959年兵庫県豊岡市生まれ。
明治大学文学部文学科フランス文学専攻卒業。

作品 「竜巻ガール」「ニュータウンは黄昏れて」「後悔病棟」「希望病棟」「懲役病棟」「老後の資金がありません」「夫の墓には入りません」「うちの父が運転をやめません」他多数

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