『白いセーター』(今村夏子)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/11 『白いセーター』(今村夏子), 今村夏子, 作家別(あ行), 書評(さ行)

『白いセーター』今村 夏子 文学ムック たべるのがおそい vol.3 2017年4月15日発行

書肆侃々房(しょしかんかんぼう)発行の雑誌 『 文学ムック たべるのがおそいvol.3 』 で読んだ短篇です。京都へ行った時、恵文社一乗寺店で買いました。

そういえば 『こちらあみ子』 (ちくま文庫) を買ったのもそうで、本の内容もそうなら、今村夏子という人がどんな人かも知らないで、しかし、これは読むべき本に違いない - そんな気がして、迷わず買ったのを今もはっきりと覚えています。

その時の感じを言えと言われても上手く説明できないのですが、時として、そんなことがあります。そしてそれは大抵外れません。たまに、思う以上の作品に出合ったりします。

あひる』 を読み、『星の子』 を読んで、私は今村夏子という人にとても興味を持ちました。こんな話を、どんな人が書くのだろうと。恵まれて、ただすくすくと育っただけの人なら、間違ってもこうは書かないのではないかと。そんな気がしてならなかったのです。

人に言えない劣等感。屈辱感に頽れて、泣いて帰った遠い日の記憶。幼い頃感じた、抱え込んで抜け出せなくなるような心の痛みや歪みが、あの頃と同じように書いてあります。そして、それは大人になった今もそうで、

それが、この 『白いセーター』 には書いてあります。

※この短篇は、クリスマスイブに婚約者の姉から子どもたちの面倒をみてくれと頼まれた主人公が、子どもたちとのちょっとしたトラブルから孤立感を深めていく様子が描かれています。

この本を読んでみてください係数  85/100

◆今村 夏子
1980年広島県広島市生まれ。

作品 「こちらあみ子」「あひる」「父と私の桜尾通り商店街」「星の子」など

関連記事

『ある日 失わずにすむもの』(乙川優三郎)_書評という名の読書感想文

『ある日 失わずにすむもの』乙川 優三郎 徳間文庫 2021年12月15日初刷 こ

記事を読む

『白い夏の墓標』(帚木蓬生)_書評という名の読書感想文

『白い夏の墓標』帚木 蓬生 新潮文庫 2023年7月10日25刷 (昭和58年1月25日発行)

記事を読む

『存在のすべてを』(塩田武士)_書評という名の読書感想文

『存在のすべてを』塩田 武士 朝日新聞出版 2024年2月15日第5刷発行 本の雑誌が選ぶ2

記事を読む

『推定脅威』(未須本有生)_書評という名の読書感想文

『推定脅威』未須本 有生 文春文庫 2016年6月10日第一刷 - ごく簡単に紹介すると、こんな

記事を読む

『切願 自選ミステリー短編集』(長岡弘樹)_書評という名の読書感想文

『切願 自選ミステリー短編集』長岡 弘樹 双葉文庫 2023年3月18日第1刷発行

記事を読む

『迅雷』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『迅雷』黒川 博行 双葉社 1995年5月25日第一刷 「極道は身代金とるには最高の獲物やで」

記事を読む

『あたしたち、海へ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『あたしたち、海へ』井上 荒野 新潮文庫 2022年6月1日発行 親友同士が引き裂

記事を読む

『死んでもいい』(櫛木理宇)_彼ら彼女らの、胸の奥の奥

『死んでもいい』櫛木 理宇 早川書房 2020年4月25日発行 「ぼくが殺しておけ

記事を読む

『うたかたモザイク』(一穂ミチ)_書評という名の読書感想文

『うたかたモザイク』一穂 ミチ 講談社文庫 2024年11月15日 第1刷発行 祝・直木賞受

記事を読む

『赤と青とエスキース』(青山美智子)_書評という名の読書感想文

『赤と青とエスキース』青山 美智子 PHP文芸文庫 2024年9月20日 第1版第1刷 二度

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『神童』(谷崎潤一郎)_書評という名の読書感想文

『神童』谷崎 潤一郎 角川文庫 2024年3月25日 初版発行

『孤蝶の城 』(桜木紫乃)_書評という名の読書感想文

『孤蝶の城 』桜木 紫乃 新潮文庫 2025年4月1日 発行

『春のこわいもの』(川上未映子)_書評という名の読書感想文

『春のこわいもの』川上 未映子 新潮文庫 2025年4月1日 発行

『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)_書評という名の読書感想文

『銀河鉄道の夜』宮沢 賢治 角川文庫 2024年11月15日 3版発

『どうしてわたしはあの子じゃないの』(寺地はるな)_書評という名の読書感想文

『どうしてわたしはあの子じゃないの』寺地 はるな 双葉文庫 2023

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑