『GO』(金城一紀)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/14
『GO』(金城一紀), 作家別(か行), 書評(か行), 金城一紀
『GO』 金城 一紀 講談社 2000年3月31日第一刷
金城一紀といえば、小栗旬主演のTVドラマ 「BORDER」 の脚本家としての知名度の方が高いのかも知れません。それとも岡田准一演じる 「SP警視庁警備部警護課第四係」 シリーズでしょうか。
脚本家としてもよく知られる金城一紀ですが、この人の小説は漫画になったり映画になったりで忙しい。そして漫画も映画も面白いし、TVドラマでは高い視聴率をたたき出しています。
小説を読んでいるけれど、映画を観ているようで、漫画みたいに度を越して暴れまくる。笑えるし、泣けてくる。
金城一紀は、中学校まで民族学校(朝鮮学校)に通い、国籍を朝鮮籍から韓国籍に変えると同時に日本の高校へ通うことを決意します。
彼は、日本生まれの在日コリアンです。
彼の原点は言うまでもなく彼自身の出自ですが、彼はそのことを隠さずむしろ陽のエネルギーヘ変換して、小説は厭味なく文章は明快で軽妙です。
軽妙ですが決して軽薄ではなく、「日本の内なる他者」としての自分がいまある状況を過不足なく分析する冷静さと明晰な頭脳を持っています。
『GO』は、自分の生い立ちを綴る自伝的作品なのですが、胸がすく思いで一気に読みました。
都内の私立高校に入って知り合った、広域暴力団幹部を父親にもつ加藤、互いに惹かれあう謎めいた有名女子高生の桜井。
民族学校時代の友達で秀才の正一(ジョンイル)や元秀(ウオンス)、そして主人公「僕」のオヤジとオフクロ。
登場人物のすべてが印象深く、魅力的です。
なかでも、オヤジ、桜井、そして正一。
個性が際立って鮮やかです。
こんな人物たちと巡り合っただけで人生勝ち越しだと感じ入ってしまいます。
この本を読んでみてください係数 95/100
◆金城 一紀
1968年埼玉県川口市生まれ。
慶應義塾大学法学部卒業。
作品 「GO」(2000年直木賞)「対話編」「映画編」「レヴォリューションNO.3」「フライ・ダディ・フライ」「SPEED」「レヴォリューションNO.0」など
関連記事
-
-
『コロナと潜水服』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文
『コロナと潜水服』奥田 英朗 光文社文庫 2023年12月20日 初版1刷発行 ちょっぴり切
-
-
『ウィステリアと三人の女たち』(川上未映子)_書評という名の読書感想文
『ウィステリアと三人の女たち』川上 未映子 新潮文庫 2021年5月1日発行 大き
-
-
『高校入試』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文
『高校入試』湊 かなえ 角川文庫 2016年3月10日初版 県下有数の公立進学校・橘第一高校の
-
-
『姑の遺品整理は、迷惑です』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文
『姑の遺品整理は、迷惑です』垣谷 美雨 双葉文庫 2022年4月17日第1刷 重く
-
-
『彼女がその名を知らない鳥たち』(沼田まほかる)_書評という名の読書感想文
『彼女がその名を知らない鳥たち』沼田 まほかる 幻冬舎文庫 2009年10月10日初版 8年前
-
-
『懲役病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文
『懲役病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2023年6月11日初版第1刷発行 累計23万
-
-
『ニシノユキヒコの恋と冒険』(川上弘美)_書評という名の読書感想文
『ニシノユキヒコの恋と冒険』川上 弘美 新潮文庫 2006年8月1日発行 ニシノくん、幸彦、西野君
-
-
『海よりもまだ深く』(是枝裕和/佐野晶)_書評という名の読書感想文
『海よりもまだ深く』是枝裕和/佐野晶 幻冬舎文庫 2016年4月30日初版 15年前に文学賞を
-
-
『噛みあわない会話と、ある過去について』(辻村深月)_書評という名の読書感想文
『噛みあわない会話と、ある過去について』辻村 深月 講談社文庫 2021年10月15日第1刷
-
-
『検事の本懐』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文
『検事の本懐』柚月 裕子 角川文庫 2018年9月5日3刷 ガレージや車が燃やされ