『小説 ドラマ恐怖新聞』(原作:つのだじろう 脚本:高山直也 シリーズ構成:乙一 ノベライズ:八坂圭)_書評という名の読書感想文

『小説 ドラマ恐怖新聞』原作:つのだじろう 脚本:高山直也 シリーズ構成:乙一 ノベライズ:八坂圭 角川ホラー文庫 2020年9月25日初版

東海テレビ・フジテレビ系全国ネット 「オトナの土ドラ」 初のホラー ドラマ恐怖新聞を完全ノベライズ!

恐怖新聞とは、未来に起こるありとあらゆる災厄を予言するもの。1日読むごとに、100日ずつ寿命が縮んでしまう。

京都市内の大学に通う小野田詩弦(しづる) の下に届いたのは、様々な事件や事故を予言する恐怖新聞。詩弦は未来を変えようと奮闘するが、新聞を1度受け取るごとに100日ずつ寿命が縮まることを知り困惑する。自分を守るため、恐怖新聞の次なる契約者を探すも死へのカウントダウンは止まらない。悪夢のような毎日が続き彼女の日常が崩れ始めた時、さらなる壁が立ちはだかる。つのだじろうの名作を実写化したドラマを完全ノベライズ! (角川ホラー文庫)

世界が再び歪む。
翻弄される意識の中で、詩弦はその声を聞いた。
「シズが跡形なく消え去った後、時折、不吉な凶事を記した紙が道端で見つかるようになった・・・・・・・」
聞き覚えがある。
これはあの吊り目の青年、鬼形礼の声だ。
「告げられた凶事は必ず起こる。そして、紙を拾った者は、寿命が百日減る。そんな噂を人々は耳にした・・・・・・・」
ゆらゆらと虚空を漂う詩弦の意識に、直接語りかけてくる。
「件が寿命を集めているのだ。いつか、この世に生まれてくるために・・・・・・・」
そうして、青年の言葉が進むにつれて、歪んだ世界がまたも形を取り戻していった。

「ここは・・・・・・・? 」
「・・・・・・・」
「何だか奇妙な夢を見てたわ・・・・・・・」

「君が見たのは夢じゃない」
「夢じゃ、ない? 」
「あれは君の前世だ。今、君が苦しんでいるのは、その時に背負った罪のせいなんだよ」
「前世・・・・・罪・・・・・」
くらりと詩弦は眩暈を感じた。
また、意識が乱れたようだった。
現れたのは、あの件の子を宿していたシズだった。それも死ぬ間際の青ざめた顔だ。さらに別の顔がそれに重なった。今度は僧侶だった。父の蔵之介に似ている僧侶。こちらも刺されて倒れる直前の顔をしている。
どちらの目も、ひたと詩弦に向けられていた。四つの瞳の中に詩弦が映っている。だが、それはどう見ても、あの鬼のような母親、ヤエの顔なのだ。(本文 P235 ~ 238 抜粋して掲載)

※最初彼女は何もわかりません。それが誰の仕業で、なぜ自分なのかも。ただの都市伝説のはずの 「恐怖新聞」 が、あろうことか自分の下に届くとは。記事にあわせて人が死に、気付くと髪が白髪混りになっている。急激に歳を取っています。

彼女の恐怖は募る一方で、回避するには 「恐怖新聞」 の次なる契約者を見つける必要があります。

それが詩弦にはできません。自分が死にたくないために、死に逝く恐怖を、罪のない他人に転化するわけにはいきません。実は詩弦は、「恐怖新聞」 を受け取るに足る、十分な理由を抱えています。果たして、

詩弦の運命や、如何に!! 

この本を読んでみてください係数 80/100

◆つのだじろう 漫画家、心霊研究家。1936年、東京都生まれ。「新桃太郎」 でデビュー、「恐怖新聞」「うしろの百太郎」 の大ヒットでオカルト漫画の第一人者となる。
◆乙一 1996年 「夏と花火と私の死体」 で第6回集英社ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しデビュー。著書多数。
◆高山直也 東京都出身。「特命係長 只野仁」「着信アリ」 など数々のテレビドラマの脚本を手がける。
◆八坂圭 ノベライズ作品に 「ブラッドラッド」「東京ESP」 がある。

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