『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(町田そのこ)_書評という名の読書感想文

『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』町田 そのこ 新潮文庫 2021年4月1日発行

思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋、そして、ともには生きられなかったあの人のこと - 。大胆な仕掛けを選考委員に絶賛されたR-18文学賞大賞受賞のデビュー作 「カメルーンの青い魚」。すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描く出す5編の連作短編集。(新潮文庫)

目次
1.カメルーンの青い魚
2..夜空に泳ぐチョコレートグラミー
3.波間に浮かぶイエロー
4.溺れるスイミー
5.海になる

町田そのこの 『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』 を読みました。著者の何を知っていたわけでもありません。初読で、勘とその日の気分で手に取っただけのことでした。いつものように、根拠のない予感と期待だけがありました。

彼女の別作品 『52ヘルツのクジラたち』 が2021年本屋大賞に決定したと知ったのは、この本を読み終える間際のことでした。こんなことが、稀にあります。私の勘と予感も、まんざらではありません。

(解説より) 一作目 「カメルーンの青い魚」 を紹介しましょう。

(前略) 真ん中にあるのは、主人公のサキコと、彼女にとってただ一人の男である “りゅうちゃん” との愛だ。シングルマザーの母親から、物心つく前に祖母に預けられたため、両親を知らないサキコと、児童養護施設育ちのりゅうちゃん。呼び合うようにして結びついた魂。けれどサキコとりゅうちゃんは、二人で生きることは難しかった。祖母とともに、小さな街で呼吸することを覚えたサキコと、小さな街では収まりきれずに、街を出て行ったりゅうちゃん。この二人の在り方が、もう、ひりひりするくらい切ないのだけど、そこにさらにちょっとした “仕掛け” があって、それが物語の “味変” になると同時に、切なさを加速させているのだ。凄い。本当に。(吉田伸子)

サキコは、両親のことを何も知りません。シングルマザーでサキコを産んだ母親は、物心がつく前のサキコを祖母に預けたままいなくなってしまいます。

祖母と二人で暮らす家を出ると、すぐに児童養護施設がありました。サキコはよくここに来て施設の子どもたちと遊んでいました。両親の揃っている子どもたちより、施設の子どもたちの方が自分に近いような気がしたからでした。

りゅうちゃんは、その児童養護施設に十五まで住んでいました。中学を卒業して、彼は左官屋に弟子入りします。施設の院長の知り合いで、とても体が大きく強面で、左手の小指の第二関節から先がない人で、タナベさんといいました。

タナベさんが病気で亡くなってしばらくの後、りゅうちゃんは突然いなくなります。泣きながらりゅうちゃんを探すサキコに、タナベさんからりゅうちゃんのことを引き継いで面倒を見るようになっていたおじさんは、「あいつはやばい奴らのところに行った」 と教えてくれました。とても哀しそうに、そう言ったのでした。

大きなみたらし団子にかぶりついたら、差し歯がとれた。しかも、二本。私の前歯は、保険適用外のセラミック差し歯なのだ。

物語はこんな文章で始まります。サキコが差し歯になったのはずいぶん昔のことで、りゅうちゃんのせいでした。

この本を読んでみてください係数  85/100

 

◆町田 そのこ
1980年福岡県生れ。同県京都郡在住。
北九州市立高等理容美容学校卒業。

作品 2016年 「カメルーンの青い魚」 で 「女による女のためのR-18文学賞」 大賞を受賞。翌年、同作を含むデビュー作 『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』 を刊行。他著書に 「ぎょらん」「うつくしが丘の不幸の家」「52ヘルツのクジラたち」などがある。

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