『はるか/HAL – CA』(宿野かほる)_書評という名の読書感想文

『はるか/HAL – CA』宿野 かほる 新潮文庫 2021年10月1日発行

はるか (新潮文庫)

再会した二人の、愛と狂気の行方。

賢人は小さな頃、海岸で一人の少女と出会い恋に落ちる。彼女の名は、はるか。大人になり偶然再会した二人は結婚するが、幸せな生活は突如終わりを告げた。それから月日は経ち、賢人は人工知能の研究者として画期的なAIを発明。「HAL – CA」 と名付けられたそのAIは、世界を一新する可能性を秘めていた - 。『ルビンの壺が割れた』 で大反響を呼んだ著者による、更なる衝撃が待つ第二作。(新潮文庫)

この小説は、若くして亡くなった最愛の妻を想い、AIにその再生を懸けた才能ある一人の男の物語です。彼はその試みを 「はるか再生プロジェクト」 と名付けます。

村瀬賢人は大学から院に進み、修了して新参の電機メーカーに就職。仕事はコンピューターのプログラム開発で、専門は人工知能。いくつかのプログラムを開発して特許を取得し、27歳で取締役に。妻のはるかが不慮の事故で亡くなった11年後、賢人は当時彼の秘書だった優美と結婚。賢人が独立して会社を立ち上げたのは、優美と結婚して3年目のことでした。

賢人が考えたのは、はるかのように話すAIを作ることだった。はるかと同じ声で、はるかと同じように話し、はるかと同じように答え、はるかと同じように笑う。
そんなAIを作れば、はるかと会話を交わすことができる。そこにははるかの実体はないが、生きているはるかと同様のコミュニケーションを取ることができるはずだ。
賢人はそのためのプログラムの開発を決意した。
(本文より)

チームは、賢人とはるかの膨大な会話の録音から、はるかの性格を分析する作業を始めます。全部で1246時間21分ある録音をすべて聞き、はるかの性格を分析します。他にはるかを撮影した映像が69時間45分あり、これらの映像にも会話があり、会話時の表情があります。すべてが貴重な資料でした。

次に賢人は、音声再現システムを作り出すための音響技師たちのチームを作り、続いて、はるかが話す映像を作ろうと考えます。賢人と映像チームは、様々な試行錯誤の末、実際の映像とコンピューターグラフィックスを組み合わせることによって、それを可能にしました。結果、モニター上には、実際にカメラの前ではるかが話しているのと寸分変わらない映像を映し出すことに成功します。

しかし、それでも賢人は満足しません。表情だけが二次元のモニターに現れるのではなく、全身をホログラムで再現できないかと考えたのでした。

5年の月日と莫大な費用を投じ、遂に賢人は夢を叶えます。高性能のCPU (中央処理装置)125台、GPU (グラフィックス処理ユニット) 18台を備えた未知なるAIは完成したのでした。賢人はそれを 「HAL – CA」 と名付けます。

この時、賢人は46歳。AIとして再生したはるかは、今も28歳のままです。

※その後、賢人がした体験を想像してみてください。とうに死んでしまった愛する人が、まるで生き返ったようにして、再び目の前に出現したとしたら。同じ声で、同じように話し、切なげに、とても会いたかったと言ったとしたら・・・・・・、どうでしょう?

 

この本を読んでみてください係数 85/100

はるか (新潮文庫)

◆宿野 かほる
2017年、書き下ろし長編 『ルビンの壺が割れた』 でデビュー。現在に至るまでプロフィールを一切非公表とし、覆面作家として活動している。

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