『花びらめくり』(花房観音)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/05 『花びらめくり』(花房観音), 作家別(は行), 書評(は行), 花房観音

『花びらめくり』花房 観音 新潮文庫 2021年12月25日4刷

「誘ってきたのは奥さんです」 「私は犯されました」 「妻と部下は、悦びあっていました」。不貞の現場でせめぎ合う間男、妻、夫それぞれの “真相“ (「藪の中の情事」)。あなたからの贈り物は、左腕でした。私の体を知り尽くすその手は、何度でも快楽の波を呼び起こす (「片腕の恋人」)。

物語に感応し溢れ出す一片、また一篇。団鬼六賞受賞作家があなたの欲望の蓋を静かに開ける - 艶やかな五つの官能ものがたり。(新潮文庫)

車で10分。町に唯一の本屋・がんこ堂へ行きました。入ってすぐのところに置いてあるのは最近話題の単行本や新書で、これはいつも通り。驚いたのはその裏側で、スペースいっぱいに “いかにもな“ タイトルの文庫がずらりと並んでいるではないですか!? ここに書くのをためらうような、その場でじっと眺めているのが憚られるような 「官能小説」 のあれやこれやが置かれています。

しかも、ご丁寧なことに、中で抜きん出て 「エロい」 本にはわかりやすくピンクの手書きPOPが添えられています。

少し昔に活躍した有名作家の作品ばかりではありますが、これは正直なかなか手に取りづらい。選んだ本をレジまで持って行き、買って帰る勇気が果たして少年少女諸君にはあるのでしょうか。いやいや、今時そんなことは気にすることではなくて、何程の躊躇もないと踏んでの企画なのでしょうか。

書店の思うところはわかりません。ただ、この時季にやる企画としてはいかがなものかと。ほかに何かあったのではないかしらと。

参考 【本作に関して】 2016年10月1日に新潮社 〈新潮文庫〉 より刊行された。カバー装画は、池永康晟が担当している。著者の花房観音は 「東雅夫の文豪怪談アンソロジーで川端康成の短編 『片腕』 を読んだときに、何とエロティックな話なんだろうと思い、近代文学を代表する文豪たちの名作を、現代が舞台の官能小説にアレンジした」 と語っている。『片腕』 の他に、芥川龍之介 『藪の中』、谷崎潤一郎 『卍』、夏目漱石 『それから』、三島由紀夫 『仮面の告白』 をモチーフにしている。フリーライターのさゆは、短編 『それからのこと』 について、「女性独自のドロドロとした性が描かれており、心を揺さぶられる」 と述べている。(wikipediaより)

※こういうことでもないと、きっとこの先一生手に取らなかっただろうと思う一冊を買いました。驚きました。著者の花房観音さんが京都在住で、かつて京女 (京都女子大学) に通っていた人とは思いもしませんでした。(実に個人的なことで、本とは何の関係もありません)

この本を読んでみてください係数 80/100

◆花房 観音
1971年兵庫県生まれ。
京都女子大学文学部教育学科中退。

作品 「花祀り」「萌えいづる」「恋地獄」「偽りの森」「楽園」「指人形」他多数

関連記事

『凍てつく太陽』(葉真中顕)_書評という名の読書感想文

『凍てつく太陽』葉真中 顕 幻冬舎 2019年1月31日第2版 昭和二十年 - 終

記事を読む

『ミスター・グッド・ドクターをさがして』(東山彰良)_書評という名の読書感想文

『ミスター・グッド・ドクターをさがして』東山 彰良 幻冬舎文庫 2014年10月10日初版 医

記事を読む

『部長と池袋』(姫野カオルコ)_書評という名の読書感想文

『部長と池袋』姫野 カオルコ 光文社文庫 2015年1月20日初版 最近出た、文庫オリジナル

記事を読む

『ぼぎわんが、来る』(澤村伊智)_書評という名の読書感想文

『ぼぎわんが、来る』澤村 伊智 角川ホラー文庫 2018年2月25日初版 幸せな新婚生活をおくって

記事を読む

『僕のなかの壊れていない部分』(白石一文)_僕には母と呼べる人がいたのだろうか。

『僕のなかの壊れていない部分』白石 一文 文春文庫 2019年11月10日第1刷

記事を読む

『ビタミンF』(重松清)_書評という名の読書感想文

『ビタミンF』重松 清 新潮社 2000年8月20日発行 炭水化物やタンパク質やカルシウムのよ

記事を読む

『鼻に挟み撃ち』(いとうせいこう)_書評という名の読書感想文

『鼻に挟み撃ち』いとう せいこう 集英社文庫 2017年11月25日第一刷 御茶ノ水、聖橋のたもと

記事を読む

『八月の路上に捨てる』(伊藤たかみ)_書評という名の読書感想文

『八月の路上に捨てる』伊藤 たかみ 文芸春秋 2006年8月30日第一刷 第135回 芥川賞

記事を読む

『ベッドタイムアイズ』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『ベッドタイムアイズ』山田 詠美 河出書房新社 1985年11月25日初版 2 sweet

記事を読む

『おはなしして子ちゃん』(藤野可織)_書評という名の読書感想文

『おはなしして子ちゃん』藤野 可織 講談社文庫 2017年6月15日第一刷 理科準備室に並べられた

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『執着者』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『執着者』櫛木 理宇 創元推理文庫 2024年1月12日 初版 

『オーブランの少女』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『オーブランの少女』深緑 野分 創元推理文庫 2019年6月21日

『揺籠のアディポクル』(市川憂人)_書評という名の読書感想文

『揺籠のアディポクル』市川 憂人 講談社文庫 2024年3月15日

『海神 (わだつみ)』(染井為人)_書評という名の読書感想文

『海神 (わだつみ)』染井 為人 光文社文庫 2024年2月20日

『百年と一日』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『百年と一日』柴崎 友香 ちくま文庫 2024年3月10日 第1刷発

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑