『偽りの春/神倉駅前交番 狩野雷太の推理』(降田天)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/06
『偽りの春/神倉駅前交番 狩野雷太の推理』(降田天), 作家別(は行), 書評(あ行), 降田天
『偽りの春/神倉駅前交番 狩野雷太の推理』降田 天 角川文庫 2021年9月25日初版

5人の容疑者VSチャラい警官の心理戦ミステリ このおまわりさんからは逃げられない 第71回 日本推理作家協会賞 (短編部門) 受賞作
老老詐欺グループを仕切っていた光代は、メンバーに金を持ち逃げされたうえ、『黙っていてほしければ、一千万円を用意しろ』 と書かれた脅迫状を受け取る。要求額を用立てるために危険な橋を渡った帰り道、へらへらした警察官に声をかけられ - 。第71回日本推理作家協会賞 (短編部門) を受賞した表題作 「偽りの春」 をはじめ、”落とし狩野” と呼ばれた元刑事の狩野雷太が5人の容疑者と対峙する、心を揺さぶるミステリ短編集。(角川文庫)
[目次]
・鎖された赤
・偽りの春
・名前のない薔薇
・見知らぬ親友
・サロメの遺言
好きか、嫌いか - 面白いかどうかの分かれ目は主人公・狩野雷太のキャラクター、一点にあるのだと思います。警察官らしくないといえば、らしくない一方の狩野ではありますが、視点を変えれば、彼ほど警察官に相応しい人間はそうはいません。
何気に交わす会話の中で、相手の (犯罪にかかる) 一挙手一投足を見逃しません。常に、普通ならざる “端緒” を探っています。じわじわと、真綿で首を締めるように相手を追い詰め、相手の言い分が “破綻する” まで容赦しません。執拗で粘着質なその性格は、彼の見た目と日頃の言動とは天と地ほどの差があります。
表題作が第71回日本推理作家協会賞 (短編賞) を受賞したのもむべなるかな。
考えてみれば、著者はデビュー時からすでに即戦力のプロだった。それもそのはず、降田天が鮎川颯と萩野瑛の二人からなる作家ユニットであることは広く知られているが、二人は早くから少女小説で活躍しており、降田天名義の長篇 『女王はかえらない』 で2014年の第13回 『このミステリーがすごい! 』 大賞を受賞したのは、再デビューだったのだ。
同賞の選考委員として筆者がその現場に立ち会えたのは誠に幸運だったが、女性二人のユニットと聞いて、執筆も倍速かとつい思ったのはとんだ勘違い、文章にも仕掛けにも妥協を許さないアーティスト気質だったようで、本書においても、ネタ探しから、取材、話作りまで、苦労を重ねた成果が表れている。
そしてそれは、狩野雷太シリーズ初長篇になる次作 『朝と夕の犯罪』(2021年9月29日刊) でも見事に結実している。(以下略/香山二三郎の解説より)
※本にある5編は、狩野雷太がかつて現役の警察官だった頃の話です。彼は既にその職を辞しています。
この本を読んでみてください係数 80/100

◆降田 天
執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)とプロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)による作家ユニット。『女王はかえらない』 で第13回 「このミステリーがすごい」 大賞を受賞し、降田天名義でのデビューを果たす。
作品 「彼女はもどらない」「すみれ屋敷の罪人」「ネメシスⅣ」など
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