『不思議の国の男子』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文

『不思議の国の男子』羽田 圭介 河出文庫 2011年4月20日初版


不思議の国の男子 (河出文庫)

 

年上の彼女を追いかけて、おれは恋の穴に落っこちた・・・男子校に通う高1の遠藤は、女子高に通う高3の彼女と、年下であることを隠してつきあっている。二人の、SMならぬSSというおかしな関係の行方は? 恋もギターもSEXも、ぜーんぶ〈エアー〉な男子の〈純愛〉を描く、各紙絶賛の青春小説! (「BOOK」データベースより)

単行本として刊行されたときのタイトルが『不思議の国のペニス』- さすがに「ペニス」はないだろう・・・という議論があったかどうかは分かりませんが、文庫になって『不思議の国の男子』と改題されています。

それにつけても羽田圭介という人物は、尋常であるのかないのか、折々に物議を醸す人であるらしい。

この本を読む前に読んだのが『メタモルフォシス』という小説で、これは真性の変態男による、真に変態な話です。時代の大きな社会問題として「老人介護」の話を書いて芥川賞を受賞したかと思いきや、その前にはまるで違う世界を描いています。

それがいかにも赤裸々で、過剰で、「コイツは一体何者なんだろう・・・」などと、失礼なことを思ったりもします。相応の年齢ならまだしも、年端もいかぬ(!?)青年の心の中に一体何が渦巻いているのだろうと、心底不思議に感じたりしています。

この小説においても、主人公の遠藤(私立の男子校に通う高校1年生)とナオミ(遠藤とは別の高校の3年生)がデート代わりにしているのはSMプレイならぬ「SS」プレイです。ことの是非は別として、羽田圭介は余程〈変態プレイ〉に興味があるようです。

『メタモルフォシス』の切迫感や臨場感には遠く及びませんが、それでも2人はそれなりの衣装を纏い、牛革製の鞭(ナオミが命令して遠藤がアダルトショップで買ったもの)などという小道具をホテルに持ち込んでは、互いを罵り、時に暴力に及んで事を成し遂げようとします。

しかし、彼らがしているのはあくまで戯れ事です。「SSプレイ」はどこまでもプレイのままで、2人が取り組む(!?)姿勢はどこか子供がしている学芸会にも思え、まるで色気がありません。

では、2人が成し遂げようとしているのは何なのか - といえば、これが不器用極まりないのですが、他でもないリアルなSEXです。

遠藤からするとそれはさらに直截的で、要は「挿入」するかしないか、できるかできないかだけが問題なのです。実はナオミの方も、かなりの温度差があるのですが、遠藤と結ばれることを望んでいます。2人は間際にいるのですが、結局は成し遂げないまま危うい遊戯を続けています。

2人は何ら特別ではない、ごく普通の高校生です。遠藤はひたすら「包茎」を気に病む童貞で、ナオミはまるでそうは見えないのですが、棄てる勇気が持てない、純情可憐な処女なのです。

※ あとは、男子校で交わされる、思春期の始めにありがちな、幼くも卑猥に満ちた会話のオンパレードです。それらを含めて、(文庫の帯にあるような)「童貞文学の金字塔」であるかどうかは、読者のみなさんのご判断に委ねたいと思います。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


不思議の国の男子 (河出文庫)

◆羽田 圭介
1985年東京都生まれ。
明治大学商学部卒業。

作品 「黒冷水」「走ル」「メタモルフォシス」「盗まれた顔」「スクラップ・アンド・ビルド」「ミート・ザ・ビート」他

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