『きみの友だち』(重松清)_書評という名の読書感想文

『きみの友だち』重松 清 新潮文庫 2008年7月1日発行


きみの友だち (新潮文庫)

わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる - 。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない ・・・・・・。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。(新潮文庫)

恵美ちゃん - 僕はこれから、きみと、きみにかかわりのある何人かの子どもたちの話をしようと思う。

最初は、きみだ。きみは、松葉杖をついている。小学5年生のときに交通事故に遭い、左膝を複雑骨折したからだ。松葉杖なしでは歩けなくなり、それはこの先ずっと続くと言われ、きみはひどく落ち込んでいる。

そうじゃないのに、事故をひとのせいにして、怒ってばかりいる。拗ねているのだ。それまで友だちだったみんなとは口をきかなくなり、クラスでいつもひとりでいる病気がちの由香ちゃんとだけつるむようになった。本当は嫌だけど、しかたなくといった感じで。

ブンちゃん - 次は、きみの話だ。ブンちゃんは学力優秀、スポーツ万能で、間違いなく5年3組のヒーロー、だったのだ。ところが、モトくんが転校して来てからというもの、ちょっと具合がおかしくなっていく。

ブンちゃんは相変わらずヒーローでクラスの人気者ではあったのだが、それまでみたいにぶっちぎりの存在ではなくなってしまった。すべてはモトくんのせいで、彼はブンちゃんと同じくらい勉強ができ、スポーツもできる「第二のブンちゃん」だったのだ。

堀田ちゃん - きみの話をする。僕はきみのことがとてもよくわかる気がする。だから、きみを見ていると時々かわいそうになる。そんなに無理しなくてもいいのにと、つい声をかけたくなる。たぶんきみは、ひとりぼっちよりも寂しい「みんなぼっち」なんだと思う。

きみはクラスの人気者だ。友だちがたくさんいる。「堀田ちゃん、堀田ちゃん」とみんなに呼ばれて、呼ばれたら必ず「ほいほーい」と振りを付けて駆け寄って、おしゃべりの話題にすばやく合流する。付き合いがよくて、よくしゃべって、よく笑う。

みんなを笑わせるのが大好きだ。「堀田ちゃんって面白すぎーっ」と言われると、うれしくてしかたない。ところが、わくわくして眠りについたはずなのに、きみはときどき、怖い夢を見てうなされることがある。足元の地面が不意に消え失せ、どこまでも、はてしなくどこまでも、落ちていくような夢を。

三好くん - 自分が物語の主役をつとめるなんて夢にも思っていないはずの、きみ。きみを主人公にして、僕はこんな話を書いてみた。

ハナちゃん - きみの話だ。旅の途中ですれ違ったような、ほんのわずかな間だけ、恵美ちゃんと由香ちゃんの友だちだったきみの話を、いまから始める。

佐藤くん - つらいな、きみは。きみたちの世代の好きな言い方をするなら、きみは「イタい奴」になるのだろうか。「サムい」奴になるのだろうか。きみの話をする。じつを言うと、僕は少しきみに似ているところがある。

西村さん - きみは、九月に転校してきたばかりだった。ちいさな秘密を背負って新しい学校にやってきた。入れ替わるように入院をした由香ちゃんのことと、みんなと付き合わない恵美ちゃんのことが、気になってしかたなかった。

モトくん - そして、再び、恵美ちゃん - きみの話をしなくてはいけない。二度目で、そして最後になる。きみと、きみの友だちの、お別れの話だ。

※この物語の最後には、それまでの9編とは違う、あっと驚く「オチ」があります。が、それはここでは言わないでおきます。

思うべきは、人はそれぞれに、こうまでして少年少女時代を生き抜いた上に大人になる、ということです。彼らには一切の妥協が許されません。すぐに隠れてしまえるほどの、広い場所では生きていないからです。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


きみの友だち (新潮文庫)

◆重松 清
1963年岡山県津山市生まれ。
早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。

作品「定年ゴジラ」「ナイフ」「ビタミンF」「十字架」「流星ワゴン」「疾走」「カシオペアの丘で」「あすなろ三三七拍子」「星のかけら」「ゼツメツ少年」他多数

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